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指摘され、カチコチに固まるトモ。
「え、えっ?そっ、そんなことないっ、けどねえ」
「図星か」
「えー?」
ルビィは顎に手を置きグイーッと顔を近づけた。トモは顔を真っ赤にして体を逸らす。
「トモ、私をプロデュースしない?」
「ん?」
「だから、トモプロデュースで、私をアイドルデビューさせて?」
返事に困るトモを見て、ルビィは座ったまま器用に距離をとり、土下座した。
「なっ」
「トモさまっ。あなたは長年アイドルオタクをされている猛者とお見受けいたしましたっ。私の命を左右する御方に頭を上げるわけにはいきません。どうかどうかっ」
(忙しいやつ)
トモは困惑しつつ、自分の手でアイドルを作り上げることには、興味があった。
(命がかかっているんだ。一度設定を作ったら、変更することは二度とできない。ルビィも暴走することはできない。もしかして、この先の未来は俺次第……?)
ゴクリ。
(俺もやっと、この世界で頭角を現す時が来たか)
「フッフッフ。いいだろう。いざ、出陣っ」
「ははーっ」
「ルビィさん、トモさん、ごめんなさいねえ」
「「はいいっっ」」
二人の茶番を眺めていたグルスの奥様は、片頬に手を当てて首を傾げた。薄い金色の髪を一つにまとめて腰まで三つ編みにし、カントリー風の服を着ている奥様。肩を軽く上げ、チラリとグルスに流し目でアピール。グルスは奥様の肩を持ち、『どうした?』と奥様に聞いた。
「グルス様。私、どうしたらいいのかしら。二人にはいつまでもいてほしいのだけど、子どもたちが起きちゃうわ。起きてぐずったら、グルス様に迷惑がかかっちゃう」
「我が世話をしよう。なかなか側に居られないのだから、おまえはゆっくりと休むがよい」
「ダメよ、そんな。グルス様こそしっかり休んでください。私、グルス様が側に居るだけで、心も体も休めます」
グルスに対する色目と違い、ルビィとトモを見つめる冷たい視線に、二人はビクッと体を震わせた。
二人は、こういう女性の態度が何を意味しているのか知っている。
(ああ。この人は、陰険な人だ。グルスの僅かな滞在時間の邪魔をするなと圧力をかけているのか。どこにいっても変わらないんだな)
「あっ、私たちこれから、街を散歩しようと思って、ねえ?」
「お、おう。そうですよ。俺、グルスさんに家のルールのこと、教えていただいてますので、気にしないでくださいっ」
「あら、そう?」
奥様は、また、グルスに流し目。
「そうだぞ?我の弟子だから、信用せよ」
奥様は体をクネクネと動かしながら、グルスに密着する。
「私、グルス様がおっしゃるのでしたら信じます。じゃあ、ルビィさん、トモさん。玄関からだとうるさいから、部屋に繋がるよう、魔法を使ってくださいね」
「はっ、はいっ」
「いくぞ」
「はぁい、グルス様」
奥様はグルスに抱きついて、二人の部屋を後にした。
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