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「なんで、あんたは斜め上の回答で攻めてくんの……」
ズーンと重石が乗ったかのように、トモは肩を落した。ルビィは知ったこっちゃないと話を続けていく。
「トモ、あなたこそ何もわかってない。私の命は、トモにかかってるの。失敗すれば死よ?真剣になるでしょうよ」
「あー。はいはい。結局は自分が一番ってことね?俺はどうせ使い捨てですよ……って、いたっ、痛いって」
ルビィは立ち上がると、金のパンプスでグリグリとトモの脇腹に攻撃した。
バチイッ。
次に、湿った音が響いた。顔を上げたトモに、ルビィは思いっきり張り手をかましたからだ。
「おい、くそっ、なんだよっ」
辛い思い出を重ねて潤んでいた目を痛みのせいにし、トモは睨み返す。ルビィは仁王立ちでトモを見下ろしていた。
「あのさ、自らの価値を下げないでくれない?つまんないし、もったいない」
「……は?」
トモは混乱していた。
完全に世の中をなめている。何も知らないルビィが、なぜ、これほどまでに自信に満ちているのか。
この世界に来た時、期待よりも不安のほうが大きかったトモは、石橋を叩いて渡るように、一歩一歩前に進んで、コツコツとレベルを上げていったというのに。
「いい?価値ってのは、いつの時代も他人が決めるの。凹む時間があるなら自分を磨けよ」
「やってんじゃん。やってきたから就職できたわけで」
バチィン。
「つぅ……」
今度は反対の頬。
「ばっかじゃないの?評価してもらうのと、評価してほしいでは意味合いが全く違うんだって。まっ、今後は?私が関わるから?すぐに適正価格まで引き上げるけどね?もちろん、トモも私のことを評価していいよ。連れ高で行こうよ」
「あー、もうっ。わけわからん」
「仕方がないよ、初心者なんだし」
「初心者はルビィじゃん」
不敵な笑みを浮かべたルビィは、肩につくぐらいのフワフワな茶髪を耳にかけて屈む。
「ふふ。なんか楽しくなって来ちゃったなー。あなたの可能性を、この美少女の私が全て利用してあげるから、ありがたいと思いなさいねっ」
(ダメだ、こいつとは会話が成立しない)
「はあ。わかったよ。とりあえず、任せればいいんだろ?」
「やったっ」
トモは完全に降伏した。
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