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「じゃあ、トモ。『屈強な男たち』について教えてよ。私たちには知識が必要よ?事前リサーチは細かければ細かいほどいいんだから」
鼻息荒く、ボフッと音を立ててベンチに座り直したルビィは、一語一句逃すまいと、真剣な眼差しでトモを見つめた。
不易な笑みを隠せないルビィ。隣で目をランランと輝かせているルビィの谷間に恐怖したトモは、自然に見えるよう横にずれ、一人分の距離を空けた。
「うん、うん。なっ、何でも聞いて?え、えっと、Sランクって色々あるんだよね?『屈強な男たち』は肉体的なステータス、イコールSランクってイメージが強いでしょ。そんなのがいっぱい集まるから、ガチムチが多くてさ。肉体的なランクは、上げやすいし」
目を泳がせながら、トモは丁寧に言葉をつないだ。
「へー。トモは?」
ルビィはグイグイと近づいてくる。トモは、学生時代のトラウマでルビィのような垢抜けた女性が苦手。胸の谷間と共に迫ってくるルビィの迫力で、トモはまた尻を動かし、一人分のスペースを開けた。
「俺?あー、無理、無理。ありえない。筋肉トレーニングに付き合わされて、一応Bランクまではいったけどね。医療班と一緒に待機して、特にやることもなく勉強して、気付けば語学がSランクになった。その流れで、ギルドでは交渉担当。色々な場所に連れて行ってもらえるから、こっそり植物図鑑とモンスター図鑑なんか作ってみたりして。あ、データあるから見てみ?」
男は自慢げに、首にかけていた身分証明書を透明カバーから取り出した。ルビィの真っ白なカード型の身分証明書とは違い、トモの身分証明書は光沢のあるエメラルド色。二回タップすると、ステータスディスプレイが投影された。
「すごー」
ルビィも自分の身分証明書で真似してみたが、出て来ることはなかった。
「なんで?」
「ああ。これは、Aランク以上じゃないと実装されないの。すごい精巧なんだよな。この小さなカードの中に組み込まれた基盤とか、組み立て方法とか気になるけど、偽造防止機能が働いて、ちょっとでも中身傷つけると通報されるしね。錬金術のレベル上げするには、世界に論文が認められて、かつ、試験だから結構難しいし。どうやるのかわからないんだけど、相性の悪い錬金術に魔法も組み込まれているの。説明文は禁書で、語学レベル高くても古代文字の読解力も必要で読めないみたいだし」
「……あっ、そうなんだ。すごーい」
「聞いてなかったでしょ」
「そっ、そんなことないよー?」
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