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「は!?」
思わず聞き返した。机の上にはプリントアウトされた私の血液検査の結果がある。涼はその検査項目のひとつを、ボールペンの先端で示しながら説明した。
「運動後に増える体内の老廃物」
今すぐに担当医を変えてもらっていいですか。
「俺もあとで調べてみるか」
冷ややかな目で見ていると、ぼそりとそう呟いた。
「体はなんともない?」
ちらりと私の下半身に目をやった。何を言いたいのかはわかる。昨日、無理をしたから大丈夫かという意味だろう。
「なんとも、ない、です」
「ならよかった」
血液検査の用紙を渡される。
「今回も異常なし。また風邪引かないようにな」
それもたぶん、昨日はほとんど裸で過ごしていたためだろう。どの会話も、壁の向こうにいる看護師さんたちが聞いていたとしても、ごく自然な医者と患者のやり取りでなんら問題はない。動揺しているのは私だけ。
「ありがとう、ございます」
心を搔き乱されて、素直にお礼を言う気になれない。
「次回で最後だから」
もうすぐ手術してから一年だ。退院後は一年間、定期的に通院して経過を診ると説明されていた。三カ月ごとに外来で涼に診てもらってきたけど、それが次回で最後となる。
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