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気づくと愛音がもぐもぐと口を動かしながら、おもしろおかしそうに私を見ていた。聞いてみたいけど、そんなこと聞けるわけがない。ところが愛音は薄々気づいているみたいで、
「もしかして、ついに先生としちゃった?」
と、にやつきながら訊いてきた。
「なんで、わかったの?」
「今のでなんとなく。尋常じゃなく赤面してたから。っていうか卒業まで待つなんて、普通に無理でしょ。だからそろそろかなーって」
バレたなら仕方ない。
「ねえ、二人はいつも、どんな感じ?」
「うーん、普通だと思うんだけどね」
その普通がよくわからない。
「で、どうだった? よかった?」
「ここではちょっと、口に出せないかな」
まわりにクラスメイトが大勢いる教室で話す勇気はない。
「とりあえずすっごく幸せそう。最近いつも頬が緩んでるもん。よかったね、彩。おめでとう」
「ありがとう」
幸せであることは間違いない。ときどき思い出して浸ってしまうくらいには、満たされている。顔には出さないように気をつけよう。
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