フェーズ6

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「結婚指輪も今日見にいくか」  立ち止まったアクセサリーショップで涼が言った。 「これがあるからいらない」  指輪のはまった左手を見せる。 「またそんなこと言って。それは婚約指輪だろ」 「結婚指輪があったらこっちの出番がなくなっちゃう。涼だって指輪つけられないでしょ?」  医者でしかも外科医なんだから、衛生的に指輪はつけられないはず。 「休みの日につけるよ」 「じゃあ、二千円くらいので。ほら、ここにあるよ」  店頭に並ぶシルバーリングを指差した。 「二千円て……高校生のペアリングでももっと高いだろ」  涼が呆れたように見る。 「てっきり女避けにつけさせたがると思った」 「逆に指輪が引き寄せちゃうなんてことも――」  言いかけて、人混みの中に見覚えのある顔を見つけた。 「変なこと知ってるね、お前」  この間、彼氏とできなくて悩んでたクラスメイトだ。その彼氏らしい人と手を繋いで仲睦まじく歩いている。目が合い、お互いにはにかんだ笑顔で目礼を交わした。 「友だち?」  その様子を見ていた涼が言った。 「うん。この前話した同じクラスの、ええと……」  説明に困って言い淀んでいると、すぐに思い出してくれた。 「ああ、入口を間違えられてる子ね」  すっかり決めつけている。二人はあれからどうなったんだろう。とりあえず仲良さそうで安心した。
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