529人が本棚に入れています
本棚に追加
/784ページ
どこからがどこまでが夢だったのかわからない。深夜に目が覚めて先生と会話をしたのは現実? 自信がない。
翌朝、ベッドから出たところで隣の人妻に声をかけられた。
「昨夜はごめんなさいね。手術の痕が痛むから先生を呼んでもらったの。そしたら伊吹さんも隣でうなされてるようだったから、先生に声をかけてもらったんだけど、大丈夫だった?」
現実だったらしい。
「は、はい。大丈夫です。ご心配かけてすみません」
いかがわしいと思った声は彼女のうなり声だったのか。それであんな夢を見てしまったんだ。ひどい内容だった。夢でよかった。
洗面所は廊下を挟んでナースステーションの隣にある。今朝、顔を洗って病室に戻るときに私は見てしまった。先生はナースステーションの奥にいた。私を担当してくれている看護師さんと一緒に。看護師さんから先生に手作りのお弁当を渡しているところだった。先生の表情は見えなかったけれど、しっかり受け取っていた。急に先生が遠くに感じた。もとより私のものでもないのに。
「あの看護師さんと付き合ってるんですか?」
どうしても気になって、回診のときに訊ねてみた。先生はきょとんとした顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!