作物泥棒

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 そろそろ収穫だと、家の手伝いで駆り出された畑作業。でも肝心の畑に着いた時、俺は言葉を失った。  作物が残らず盗まれている。  あまりの光景に、俺だけでなく、みんなが言葉を失った。  でも数秒後、畑は笑いに包まれた。 「こりゃまぁ、見事なまでに盗られたな」 「まさに『根こそぎ』って奴だ」 「今時、こうまで農作物に執着する奴がいるんだな」 「いやー、それが、最近は『盗んだ物を売る』とかで、味も見た目も頓着なく、実ってりゃ何でも盗むらしい」  そこでいったん途切れた会話。そして、再び上がった先刻以上の笑い。 「何でもいいのか」 「ああ。色も形も大きさも重さも、まったくお構いなしらしい」 「だったら、それらがどんなにおかしくても、異常さには気づきそうにないな」 「本来は、特別なルートで少しずつしか捌けない品だ。むしろ盗んでもらった方が、一度に大量に世に出回るからありがたいぜ」 「せいぜい安値で売り払って、たくさんの人間の手元に届けてくれよ」 「買った人間が多ければ多いほど、作物はそいつらを食って栄養にし、俺達にそれが還元されるもんな」 「何も知らない作物泥棒様、万々歳、だな」 作物泥棒…完
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