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「昔、出版社に勤めてたんだけど、かなりブラックで体調崩してやめたの。フリーになると同時に、高校の同級生だった佐藤君から声かけられて、副業するようになったってわけ」
「和香子さん、オーナーのお友達だったんですか」
「まあね」
驚かれるのも無理はない。
オーナーの佐藤君は他にも店舗を持ち昼間キビキビ働いている。子供も4人。のんびりしている私と同類には見えないだろう。
「フリーライターっていうのも意外ですね。言葉遣いが軽いというか……ああ、これ悪い意味ではなくて、話しやすいってことで」
否定する部分がやや早口で、私は笑ってしまった。
「そんな気を使わなくてもいいよ。私のこれは、普段お堅い言葉を使ってる反動かもね。
そういう泊君は、他にバイトしたことあるの?」
彼はレジカウンターの向こうで、指を折りつつ教えてくれた。
「飲食店とか、引越し業者、イベントの設営、年賀状の仕分け、パン工場……深夜はここが初めてですけど、時給が良いですね」
「へえ。どおりで覚えも早いわけだ。あれこれやっているのは理由があるの?」
「いろんな業界を知っておいた方が将来の仕事選びにもいいかなと思いまして」
「しっかりしてるー」
「いえいえ、まだまだですよ」と泊君は微笑む。
なんでも受け入れてくれそうなその笑顔に、危うく「それに比べて私は……」と言いそうになった。
いけないいけない。若者に年上のフォローをさせては。
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