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深夜バイトの2人
「最近は季節の入れ替えが早いですね」
「季節の入れ替え?」
8月31日の深夜、私は泊君と「コンビニひまわり」にいた。二人ともバイトの身で、レジに泊君が立ち、私は商品の整理をしている。
「ほら、和香子さんが手に持ってるそれ、秋の新作でしょう」
言われて私は手元を見る。「コアラのワルツ マロンクリーム」があった。
「そうねぇ……まだ日中暑いのにね。秋って感じしないわ」
「そうでしょう? 昨日なんか、百均行ったら来年のカレンダー売ってたんですよ」
「カレンダー!? そりゃ確かに早いわ」
「でしょう? あとハロウィン商品もありましたよ」
「それも10月末でしょ、まだギリ8月なのにね」
「ですよね」
泊君は7月に入ってきたの大学生で、すっかり打ち解けておしゃべりする仲になっていた。
泊君はあっさりした塩顔で、ふわふわした天パが子犬みたいでかわいい。
「そういえば、ずっと聞きたかったんですけど、和香子さんは以前、どんなお仕事をしてたんです?」
私は秋の新作商品を棚に綺麗に入れ終えたところで、内心「またか」と思った。
この手の質問は聞き飽きている。
コンビニひまわりで深夜のバイトをするようになって5年目。相方は短期で入れ替わり、その度に同じ質問をされてきた。
まあ、今年30の独身女が深夜に働いていれば、なにかあると思うだろう。逆の立場なら私だって聞くかもしれない。
「実はこれ、副業なの。
本業はフリーライターなんだ」
「へえ」と泊君は興味を惹かれたようだった。
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