分かれ道

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分かれ道

 昔から、柊は朝が弱い。  朝練の日は、遅刻すると連帯責任で走らされる為、圭が柊を根気よく起こすのが日課だった。 「柊……柊……起きて……」    その日も、柊は圭に何度か起こされたが眠気に勝てずギリギリまで二度寝していた。    ドガッ!ゴッ!ゴトン!!  さすがの柊も目が覚めるほど大きな音と振動が伝わり、何事かと起き上がった。   「……何?今の音、地震?」    まもなく階下から父親の声が聞こえてきた。   「柊?圭か?どっちだ?おい、大丈夫か!?」    ただ事ではない気配に、柊もようやくハッキリ目が覚めた。部屋を出て階段を降りかけると、階段の下で圭が倒れている。   「それ圭だよ!階段から落ちたのか?」    寝惚けて足を滑らせたのだろうか?  圭は寝起きが良いし、自分と同じくらい運動神経は良い。危険だと叱られるから父親には内緒だが、バスケ以外に趣味でパルクールの真似事を動画に撮ったりしている。自宅の階段を踏み外した程度なら次の一歩で立て直せるだろうと、柊は意外に思った。  父親が圭の肩を叩きながら大声で呼びかけているが、圭はピクリとも動かない。  柊も階段を降りて近づくと、顔から血が流れているのが見えた。   「柊!すぐ救急車呼べ!」   「救急車……!?」   「落ち着け、119だぞ」    言いながら父親が状態を確認する。   「えっと、あ、はい、救急です。兄が階段から落ちて……何か、動かなくて、はい自宅です。住所は……」    慌てながらも救急車の要請を行う柊。   「……まずいな……圭、しっかりしろ!」    圭の手首を取った後、胸に耳を当てた父親が、人工呼吸と心臓マッサージを始めた。  柊が、それを見てフリーズする。 「……え?……え?嘘だろ?」   「柊!落ち着け!救急車呼べたのか?」    動揺して固まっている柊に向かって父が叫ぶ。   「……圭?息してないのか?」   「柊!柊!携帯、スピーカーにしろ!」    怒鳴られて、慌てて携帯をスピーカーにした。   「住所は◯◯町◯番地、16歳、男性、現在心肺停止状態、心肺蘇生を行っている」    父親が心臓マッサージをしながら携帯に向かってそれだけ一気に伝えると、人口呼吸で圭に息を吹き込む。   「あなたはご家族の方ですか?」   「父親で医師だ!」   「そのまま救急車が到着するか反応があるまで心肺蘇生を続けてください」   「圭……なんで……」    何もできない柊。   「ウソだろ?父さん、圭死ぬのか!?」    誠一が人工呼吸と心臓マッサージを繰り返し行うが、圭はされるがまま全く反応が無く人形のようだ。   「圭!圭!」   「圭!絶対助けるからな!」    救急車のサイレンが遠くから近づく。   「柊!外に出て救急隊誘導しろ」   「う、うん」    救急車には一人しか付き添えない。  柊は救急車を見送って、自宅で父親からの連絡を待つしかなかった。      
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