この恋が叶わないことは分かっていた。

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日が落ちて、あたりはすっかり暗くなった。川面には、向こう岸の街の明かりが映り、きらきらと瞬いていた。私は川岸に座り込み、ぼんやりとその景色を眺めていた。 もうどれくらい泣き続けただろうか。枯れないと思っていた涙も、もうすっからかんだった。大量に流れた涙とともに、悲しみや辛さも一緒に流れ落ちていた。今の私の心は、空っぽで、何の感情もなかった。そして、さっきまでの荒れた心が嘘みたいに穏やかだった。まるで風一つない凪の海だった。 私はスマホを取り出す。そこには、クマのキャラクターが、優しく微笑んでいる。このストラップが、私にとってお守りだった。私の恋を応援してくれる、キューピットのように思っていた。でも、今日でその役目も終わり。これまでありがとう。私は心の中でつぶやく。 私はストラップを握り、強く引っ張る。ストラップのひもが無残にちぎれた。 その場に立ちあがって、一つ深呼吸をする。大きく腕を振りかぶって、川に向かってストラップを思い切り投げた。 チャプッ。 聞こえるか聞こえないかの小さな音がする。水面は変わらず、街の光が瞬いていた。 「ばかやろう」 腹の底から叫んだ。その声は、闇の中にすうっと吸い込まれた。 「お前より、いい男を捕まえてやるからな」 そんなことを叫ぶと、自然と笑みがこぼれた。 私は河川敷をのんびりと歩く。ここ最近ないくらい、体が軽くなっていた。どこからともなく、虫の声が聞こえる。柔らかなBGMを聞きながら、砂利道を進んでいく。 明日良介に会ったら、一番に『おはよう』って言ってみようかな、そんなことを考える。そうだ、香織にも、ひどいこと言ったから謝らなきゃ。お詫びに駅前のパフェでも奢ってやるか。 顔を上げると、雲一つない夜空が広がっていた。ちょうど私の真上には、おぼろげな月が浮かんでいた。
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