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夏休みに入った。
夏の中でも一番夏って感じがする。
「ああ……、夏休みだ……」
「ああ、夏休みだー!」
ソファーに横並びになる双子。
同じ台詞なのに、どうしてこうも響きが違うんだろうか。
「もうお姉ちゃんってば、せっかく人が夏休みを楽しもうとしているときに!」
「夏休みなんて暑いだけじゃない! さっさと過ぎちゃえばいいのよ!」
そう言って私たちはにらめっこ。
「あーあ、早く夏休みが終わらないかなあ」
「夏休みを早く終わらせたいって思うの、お姉ちゃんくらいだよ」
「私は学校が好きなのよ」
「とか何とか言って、どうせ夏休みが終わらないと、『望田くん』に会えないからでしょ?」
ギクリと肩を震わせる。
「やっぱりそうなんだ。お姉ちゃんって単純」
「あのねえ……」
でも不思議。望田くんと出会うまでは夏休みはなかなか終わってほしくないと思ってたのに。
私はソファーにうつ伏せになる。
「ああ、早く夏休み終われー……」
「もうお姉ちゃんったら。ボーッとしてたところで夏休みが終わるわけじゃないでしょ。それより、思いっきり楽しいことして過ごしてればすぐ終わるよ」
「時間は同じでしょー」
「体感的時間は変わるでしょ。ほら、早く宿題終わらせて、プールにでも行こうよ!」
夏菜が私をソファーから起き上がらせる。
「はあ……」
「もう。ため息ばっかりついてたら、望田くんに呆れられちゃうよ。望田くん元気で真面目な子が好きみたいだし」
私はその言葉に目を見開く。
「え、そうなの? って、何で分かるの? 学校も違うのに」
「いや、お姉ちゃんの話聞いてたら何となくそうかなって思っただけで」
「何だ……」
「まあまあ、元気で真面目なのはいいことじゃない。早くやろ」
「はあ……。まあ、宿題はやらないとね」
それこそ、望田くんに呆れられてしまう。
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