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公暁は、父頼家のことを思った。
北条と対立した末の非業の最期。どれほど無念だったことだろう。
それでも、父は武士らしく、襲って来た刺客をすべて返り討ちにしてこと切れたという。
どうせ死ぬなら、せめて、父のように、武士として、自らの意思をもって華々しく戦って散っていきたい、そう思った。
そなたは武士にはなれぬ。御仏に仕える以外にそなたが生きる道はないのだ。
何もかもを見通したうえで語りかけてくる澄んだ瞳に向かって公暁は叫んだ。
「俺は、武士だ!仏の慈悲など施されるくらいなら、未来永劫、地獄を這いずり回ってやるわ!」
「その心意気やよし!」
僧兵達に交じって鍛錬を施す波多野義定が、大きく頷いた。
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