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実朝は体が弱く、実子がいない。
そのままぽっくり逝くことがあれば、公暁が還俗してお鉢が回って来ることがないとは言えない。公暁はその時に備えて髪を伸ばし、一室に籠って実朝を呪詛し始めた。
現代から見るととても信じられない話だが、呪詛それ自体に人を殺す力があると信じられていた時代のことである。
仏に仕えるための勉学などろくに身についていない公暁だったが、武芸と共に、聞きかじりでその手の密法だけは自分のものとしていた。
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