公暁、武士になろうとした男

3/35
前へ
/35ページ
次へ
 善哉が叔父実朝の猶子となった時に、新たにめのとになった三浦義村は言った。 「これからは、叔父君が若君の御父上なのです。何事も叔父君の仰せに従い、勉学に励まれますように」  この時、まだ数え七つだった善哉は、叔父の猶子ではあっても世継ぎにはなれない定めであることも、義村の言葉の意味も分かっていなかった。 「勉強は嫌い!ととさまやひいおじい様のような武士になるんだ!」  善哉は、勉強などそっちのけで、来る日も来る日も、波多野義定のもとで、泥んこになり、傷だらけになって武芸の稽古に励んだ。  
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加