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仏の道に入ることが知らされた時、善哉は、本当のことを知った。
「そなたは武士にはなれぬ。生かされていることを感謝して御仏に仕える以外にそなたが生きる道はないのだ」
「御所様!」
善哉の前で、叔父実朝の公暁の夢を打ち砕くかのような言葉に、同席していた大人たちは、それぞれ異なった心情から、慌てふためいた様子を見せた。
執権北条義時は、善哉の父頼家との確執を公然と露わにされたことに動揺し。
三浦義村は、真実を告げられた公暁の衝撃の大きさを憂慮し。
波多野義定は、自らの思惑どおりに善哉を養育することができなくなることを恐れた。
「分不相応な望みを抱くことは、後々の禍根となる。こういうことは、はっきり言った方がよいのだ」
若い叔父の瞳は、仏のように静かで澄んでいたけれど、それは間違いなく為政者のものだった。
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