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「これが終わったら・・・・
何か美味しいものでも食べましょうね・・・ 」
「うん・・・・ 」
「北斗さん何がいいか考えていて
って言っても何も考えられないでしょうけど・・・」
「うん・・・・ 」
「ずっと横で見てるからね・・・」
「うん・・・・・ 」
ああ・・・私の愛しい人・・・
どうか頑張って・・・・
終わったら今夜は沢山彼を労わってあげよう
なんなら彼が試したがっていた
あの体位を許してあげてもいい
ずっと気を張って来た所だけに
ホッと安心して一息ついた
彼の背中は汗びっしょりだった
「このスピーチ原稿・・・・
きみが持っててくれ
無くしたら大変だ!俺の人生が終わる 」
「その方がいいわね!
私はずっとあなたの講演が始まるまで
ステージ裏のここにいるから
預かっておくわ
北斗さん消防団の所に行かないとだめでしょ」
そう言って微笑みながらアリスのお決まりの
紫の「虎の巻バインダー」に
北斗のスピーチ原稿を挟む
「助かるよ!それじゃ!」
忙しそうに北斗が手を振って
また誰かに呼ばれて走って行った
ああ・・・・後ろ姿までもが愛らしい
アリスもアリスで死ぬほど緊張してる中でも
わずかに残った冷静な部分で必死に
この後の段取りスケジュールを確認する
講演が終わった後のボランティアへの挨拶・・・
打ち上げ会場の誘導・・・
パーテーション裏の会議用テーブルに座って
ノートパソコンを開いて腰を落ち着ける
そして(X)を広げリアルタイムの投稿を追う
そこには報道関係者も
彼の姿を多数画像に収めた動画が
もうすでに沢山あがっていた
北斗の野球姿
(アリアリ-フォックス)ファンの
狐のお面を被った様々なライブ参戦ファッション
ブースの食べ物とスタジアムを
バックに撮った一般人の投稿
北斗の政策案チラシ
タイムラインはお祭り騒ぎだ
フフフとアリスはそれを見て温かい気持ちになる
そして思いついた事をアリスがサラサラと
「虎の巻バインダー」に書いていく
「・・・奥さん・・・・
奥さん・・・ 」
ふと後ろから声がしたが
あまりに真剣に集中していたので
アリスは自分が呼ばれていることにしばらく
気が付かなかった
「奥さん!・・北斗の奥さん!」
自分のことだ!
「はっ・・・はい!!」
アリスは飛び上がって振り向いた
私を呼ぶのは誰?
そこには見覚えのある男が立っていた
アリスはぎょっとしたようにその人物を見つめた
だがその瞬間口元がこわばり
苦い思い出がよみがえった
アリスは大声で叫んだ
「正!!!」
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