セックスレス

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セックスレス

私たち夫婦が、セックスをしなくなったのはいつからだろう。 正しくは、私が夫とのセックスを、 「鬱陶しいだけの儀式」 と、思う様になったのはいつからだろう。 私だって、それなりに経験は積んでいる。 若い頃は、人並みに興味はあった。 オンナの皮膚感覚とは異なる、逞しいカラダに我が身を委ねる…そのためらいとドキドキ感。 そして、吹っ切れた瞬間の、甘美な心の音を楽しんだ余裕もあった。 見られている。 見つめている。 楽しかった。 だけど、セックスに嫌気がさして来たのも事実で、ついには裸になる理由すらも分からなくなった。 セックスは、愛したという互いの確認儀式。 けれど、 「感じている演技」 を、しながら、相手の要求に応じなくてはいけない。 オトコは興奮して、私を感じさせようと必死になっているけど、私のイタミは理解してはくれない。 身体の痛みと心の痛み。 結婚を決めたのは、勢いと盲目な現状にあったと今更に思う。 そしてもうひとつは、セックスの相性が良かったのも事実だ。 付き合い当初は頻繁に愛し合っていた。 シャワーも浴びずに互いを求め合った。 それくらい盲目だったのだろうか。 だけど、結婚してからは次第に激情は薄れていった。夫は仕事人間。私は専業主婦なりに懸命に家事をこなす毎日。 ひとつのベッドでふたりで眠る夜も、時の流れと共に異質な日常へと変化していく。 もともと私はキスが好きなのだ。 心を捧げた相手の顔がゆっくりと近付いてくる。 首筋に優しく触れる、温かな手の感触。 互いの鼻頭がコツンと触れる、くすぐったくて冷たい感覚。 オトコの唇も案外やわらかくて、互いの吐息を、間近で感じ合える時間がいちばん居心地がいい。 教授と出会ったあの日のドキドキを考えながら、土曜日の夜はひとりでぐっすりと眠った。 朝を迎えると、SNSに教授からのメッセージが入っていた。 『今日会えませんか?』 私は迷わなかった。 『夕方からで良ければ』 と、返信すると、すぐさま既読がついた。 教授に心を捧げられるかどうか、私自身を試してみたくなった。 夫は明日帰って来る。
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