38 報告

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38 報告

 翌朝、父と兄とガリアード、そして第二王子が公爵家にお忍びで現れて、昨日のことを報告した。 「じゃあ、リリアンは第一王子に愛の告白をされたのか?」 「……そう言われました。後妻にするとも」 「「「……」」」  父と兄と殿下、固まる。  まさかそういう流れだとは思わなかったらしい。昨日のことは全てガリアードに話したので、夫は取り乱さず落ち着いて俺たちの会話を聞いている。  当初の第一王子のやるべき予想は、リリアンからガリアードの卑劣な行為を聞き出して、公爵家を味方につけて、第一王子派閥を一気に大きくして、第二王子を倒す。こんな単純な話だったはず。 「兄上は何を考えているんだ。王位ではなくて、もしかして目的はリリアン? リリアンを正妃にはできないから、あえて他の貴族と結婚させて別れさせる。離婚歴があれば公爵令息だろうとも事故物件として後妻にすることができる。それを狙ったと!?」  絶対違う、それは副産物であって、実際狙われているのは第二王子ですから! 第二王子を除籍するために動いているのがメインで、リリアンはあわよくば手に入れて楽しんじゃおうってくらいだと思うよ、そこ間違えないでよ! 「まさか、いくら何でも王位の方が大切なはずです。きっと王位を手に入れて公爵家に恩を売り、リリアンも手に入れる。そういうことでしょう、驚きですが。リリアンはついでに手に入れる戦利品のようなものではないでしょうか」 「なるほどな、確かに。後妻にするためだけに辺境伯に喧嘩を売るのはやりすぎだからな。リリアンとんだ変態に目をつけられたな、ご愁傷様」  父の言葉に、殿下は納得したようだった。それにしても俺の扱い酷い。  そしてあんなに身を削って取った証拠が、まさかの事態になっていた。 「しかし兄上もしっかりしていたな。まさか自分自身に魔道具を仕込んでいたとは、してやられた!」 「気持ち悪い思いして頑張ったのに、殿下酷いです。そんな魔道具を王族が持っているなら、僕のやったこと意味がなかったじゃないですか!」 「気持ち悪いって、一応王子なのにな。ははっ悪かったよ。本気で忘れてたんだ」  そう、全ての魔道具や魔法を無力化する防御の魔道具が、王家にはある。人前に出る時に常に護衛はいるけれど、それ以外でも自分を守るもの。そんなもの巷にはないから存在自体、誰も知らない。録音を聞いた時、俺の声しか入っていなかったんだよ。第一王子の話すとこだけがぶつぶつって音声になっていて全く聞こえなかった。  悔しすぎる、俺はそのせいで、ガリアードにあんな変態行為をされたのに、凌辱の新しすぎる変態の扉を開かせてしまったのにぃぃぃ! 「となると、今後もリリアンが兄上から証拠を掴むのは難しいな。十日後にお前たちの変態プレイを見せろと言ってきたんだな?」 「です」  これ以上ガリアードが変態だと知られるわけにはいかない、だって本当の変態だから。冗談で済まされないくらい変態だから! 「だから、リリアンがガリアードに無理やりやられているところだろ? それを今度は公爵にでも見せるつもりか? ゲスだ」 「見せません。僕はガリアード様に無理やりされたことなどありませんし、今後もありませんから!」  ガリアードが俺の手を繋ぐ。 「もうしない。昨夜みたいなことはもうしないから、君を気持ちよくさせることだけをすると誓うよ」 「昨夜だとぉぉ!? 貴様リリたんに何をしたぁ!」  そこで兄が反応した。するとガリアードが勝ち誇ったように言った。 「私の匂い付けを」 「な、な、なんだとぉぉ!」  匂い付けだけで、ナニを想像できたの? オニイサマ。俺は遠い目をした。 「ゴホンっ!」  父が咳をわざとした。というのも、隣に座る兄がフルフル拳を握っている。今にも飛びかかってきそうな勢いを止めるために、あえて大きな咳をした。 「あっ申し訳ありません。私はオスニアンの名に誓い、リリアンを無理やり痛めつけるなどという行為は絶対しないので、ご安心ください」 「当たり前だぁー。リリたんみたいな小さくて可愛い子を相手に、妄想でもそんな行為を想像するな! リリたん、すぐにでも離縁してもいいからね。殿下が王太子になった暁には王命撤廃してもらうからね! 一生公爵家で過ごすといいよ」  不穏なことを言う。 「お兄様、心配してくださりありがとうございます。でも僕はガリアード様をお慕いしているので、できればそんな未来は望みたくないなぁ?」 「うっ、リリたんのおねだりが可愛い」  そうして取り乱しながらも、今後の方針が決まった。 「はは、リリアン愛されてるな、さぁお遊びはここまでだ。きたる十日後、兄上に見せてやろうじゃないか! ガリアード、手鏡の前でリリアンを痛めつけろ」 「はっ!?」 「お前の大好きなリリアンちゃんを、凌辱するんだよ。それで兄上はその映像を元に公爵を味方につけられると思わせるんだ、やるぞ! 第二シーズンだぁ!」  一人無駄に大声で叫ぶ殿下。 「「「……」」」  もうみんな、呆然。  ツッコミどころもわからない意味不明発言「やるぞ!」って、ヤラれるのは俺だ。やっちゃうぞぉ! なんて答えを返すとでも思っているのか?  それは、それは、恐ろしの第二弾、凌辱演劇会! 今度は朗読ではなくて、実演しろとの殿下からのお達し。  うわぁ、変態ストーカーの弟も性癖ヤバ目だった。そんなことを、実の父と兄のいる前で本人に、公開エッチしろだなんて、しかも変態エッチ、じゃなかった凌辱エッチ!?  父と兄、固まってるよ。この空気、どうしてくれよう!?  社畜の能力はキャパオーバーを迎えた。
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