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13 初夜 ~凌辱夫編~ ※
リリアンは、風呂も済ませてジュリに髪を梳いてもらっていた。
「リリアン様、お綺麗です」
「ありがとう」
リリアンは男の子だけど、レーススケスケ衣装を着ている。下着は総レースの純白、ハイレグでTバック。きゅっとしたお尻がよく見えてモッコリと男の子が際立つパンツだった。そして肩のところをひもで結ぶキャミソールの膝までくる夜着。へそも乳首も透けている。
俺、鏡に映ったリリアンを見ただけで、勃起できる。自分の体なのだけど、勃起できる。頑張って興奮しないようにしているけど、勃起できる。大事なので三回言ったぜ。
ジュリは心配そうに俺を見る。
「でもぉ、ガリアージュ様みたいな大きな男性、リリアン様が受け入れられるのか心配ですぅー?」
「……そうだね、僕も怖い」
ガリアージュって、おい。
ジュリとあらかじめ打ち合せをした通り、手鏡をもって打ち合せ通りの会話をしていたが、ジュリの話し方がおかしいのは仕方ない。この鏡の向こうに第一王子がいるのだから……多分だけど。第一王子だから暇ではないはず、もしかしたら部下に鏡に映るものを監視させてイイとこだけ見にくるのかもしれないし、初夜だとわかっているからもう待機しているのかもしれない。
「ガッリア―ドゥ様は、先ほど機嫌が、おわるうーございましたでしたねぇん?」
「……うん、僕がお父様に抱きついて泣いていたから、嫁にきたくないって思われたのかもしれない。実際に嫁になんてきたくなかったし、怖くて仕方ないけど」
ガッリアードゥって、毎回名前を変なところで改名しないでよ。笑っちゃいそうで困る。初夜を前に緊張するリリアンを演じなければいけないのに、まるでジュリが初夜を迎えるかのような緊張感!
「ジュリぃも、公爵家に帰りたいよぅ、うえっ、ごほんっ」
「……」
俺はジュリを見た、しっかりやれという意味を込めて。ジュリはますます緊張した顔をした、演技下手過ぎてだめだ。手鏡に二人の姿が投影されているって知った以上、難しいか、はぁ、仕方ない。
「ジュリ、もう下がっていいよ。初夜を迎える僕より緊張しているみたい」
「そうでございますね、そうでございました。初夜でおえおえするのは、お嬢様でした、じゃなかったお坊ちゃまでした」
「……おやすみ、ジュリ」
ジュリはバタンっと公爵家から連れてきた侍女とは思えないくらいの、大きな音を立てて、部屋から出ていった。これ以上ここに居られても、怪しすぎてなにか変なミスをしでかしそうで怖かった。そして入れ違いにガリアードが入ってきた。
結婚式の後から不仲になった設定だ。
「リリアン、脱げ」
「……」
初夜を迎える夫の第一声じゃないよね? 迫力ある顔がちょっと怖くて、リリアン本気でビクっとした。
「夫の言うことが聞けないのか!」
「も、申し訳ありません」
リリアン後ろにさがり、手鏡をそっとベッド脇のチェストに置く。それを見るガリアード。そして手鏡を乱暴なしぐさで手に取る。
「なんだ? これは」
「あっ、それは第一王子から頂いた大事なものです!」
「なんだと! 貴様は結婚する身で、男から手鏡を貰ったのか」
「えっ、はい」
リリアンは手鏡が恋人の象徴というのを知らないのを、第一王子も知っている。もしリリアンがそのことを知っていたら、初めから受け取らなかったのだから。
「きゃっ!」
リリアンはベッドに仰向けに倒された、そこは乱暴に見えて、めちゃ丁寧に。
「まさか、第一王子の愛人が俺の妻になるとは、公爵も我が辺境伯を低く見てくれたものだ」
「えっ、愛人?」
シナリオ通りに物語進んでおります。
凌辱バージョンでは、ガリアードは自分のことを「俺」と言う。野性味あふれる演出でございます。
このシナリオはオスニアン家の家令が作り上げた。
さすがに閨での話をリリアンパパと作るわけにいかないから、ガリアードが信頼できる家令と一緒に、どうすれば初夜で可愛い妻を目の前で 罵る夫になれるかを、短時間で考えたのだった。それが出来上がると、俺とジュリ、そしてヤンと執事、ガリアードと家令の六人で打合せを始めた。
ヤンはお休み許可が出たものの、つかの間で連れ戻された。妻とヤリっぱなしというわけにはいかず、俺とガリアードの初夜の警護に当たる騎士として付き合うことになった。でも俺達の結婚式の最中、ヤンはいそいそと妻のところに行って、結婚式が終わった頃にスッキリした顔で戻ってきたけどね。一日に何回中抜けシテいるの? さすが騎士、そっちも半端ないんですね。
第一王子を陥れることは、さすがに内密に進めなければならない。だから内情を知るのは少数のみ。ヤンはたまたま例の媚薬を使ってしまったので、最後まで付き合う羽目になってしまった。初夜の警護の仕事は急遽ヤンに配置換えしたのであった。
みんなでシナリオを読み、打ち合わせをした。内容が……恥ずかしかったぜ! そして今、目の前には凌辱夫風を装ったガリアードなわけだ。でも演技がやけにうますぎて、やはり本質はこちらでお間違いないでしょうね? と問いたい。
そして優秀なオスニアン家の家令にシナリオ大賞を差し上げたい。
「こんなモノがあったら集中できないだろうが、一応王子から貰ったという証拠に捨てないで保管しといてやる」
「ああ!」
そしてガリアードはそれを引き出しの中にいれた。これも打ち合わせ通り、俺の痴態を見せるのは流石に嫌だとガリアードがごねた。俺だって嫌だよ、だから声だけの演技で妻を手ひどく扱う夫を演じて、耳だけで第一王子には想像していただこうということになった。
鏡を見えないところに隠すと、俺に向かってガリアードはやっと笑顔を向けてくれた。そして俺も愛おしい人を見る目で、彼を見る。やっぱり怒っていなければ最高にかっこいい。早く彼と繋がりたい。そう思ってしまった。
あれ? 俺って、後ろに挿入してもらうことに興味があっただけで、ガリアードに興味があったわけじゃないはずなのに、おかしいな。なぜか目の前の夫になった人を愛おしいと思ってしまった。
バグか? バグなのか!? 異世界転生してきたバグが起こったぞ!
一緒に危機を乗り越える仕事仲間になったから、急に親近感というか仲間意識が芽生えて、そして信頼してしまっただけだ。きっとそうだ、これは仕事だ。愛されて溺愛されて、最終的に凌辱されないようにするための仕事……だよね?
「旦那を目の前に何を考えている? 第一王子のことか? お前は、第一王子の愛人だったんだな。あの医者もお前が淫乱だと言っていた。俺はお前のその可憐な顔に見事に騙された」
「ち、違いますっ」
バシーン!
寝室に肌を打たれた音が響いた。
「ガリ、ガリアード様ぁ!?」
「貴様、よくもこの俺に恥をかかせてくれたな! 打たれた頬が痛いか? こんなもんじゃ済まさない」
というか打たれた頬は痛くない。
だって打たれてないから……。打たれたのはガリアードの頬。屈強な男が強い力でパチンって、自分を叩くって。ちょっと興奮した。シナリオにないアドリブ入りました!
もうこの部屋の様子は見られていないから、行動は自由だ。だからガリアードが自分で自分を痛めつけても、音だけならこの状況は、浮気を疑われた妻を殴ったということになる。
俺はいそいそとガリアードの頬をなでた。可哀想に、赤くなっちゃったよ。すぐに治癒の魔法をかけた。すっと赤みが引いた、良かった。
ガリアードがそれを見て驚いた顔をした。俺が治癒の魔法を使うのを知らなかったらしい。嬉しかったのか、俺の頬を大きな手で包んでから優しく触れるだけのキスしてくれた。俺も微笑んだ。
ガリアードはさっきとは違い、態度と表情だけは甘い。きつい言葉を言っているけれど、今度はリリアンを背中から抱きしめる。今のところ会話だけは、とんでもないことになっているが、怒っているわけではなくて、その間も後ろからお腹や太ももをさわさわと撫でてきている、愛情ある触り方だった。俺は思わずシナリオにない、感じてしまった声を出した。
「あん」
「ふっ、もう男が欲しいのか? 乳首を掴んだだけでその声を出すとは、なんて淫乱だ」
「ああん!」
乳首触っていませんから!
ガリアードさんは今、乳首を一切触っておりません。触ったのは太ももだけ、でも触り方がエロいから、リリアンの総レースの下着が上を向き始めてそこを上からさわっと、指でつつかれて、リリアン思わず声をあげる。
仕方ない、十八禁仕様の体なのだから、何をされても感じやすいし、声も適度に出てしまう。
『リリアンの可愛い声、クソ野郎に聞こえていると思うと、本気で怒りが溢れてきた。ちょっと声、抑えて。私以外に聞かせたくない』
『ふっ、んん』
俺は手を口元にあてて、コクコクと頷いた。
耳もとで、リリアンだけに聞こえるように優しい声で囁くガリアード。それがまた感じてしまう。抑えろと言われてもさ、十八禁仕様のリリアンに無理難題言うなよぅ。そして耳にキスするなよ!
「じゃあ、リリアン。始めるぞ、夫を楽しませろよ」
「……はい」
ついに始まるんですね、凌辱初夜(仮)!
あくまでも仮だからね。そうだよね、そのままヒートアップしてシナリオに無い行動起こさないよね? 本性出ませんように。そっと俺はお祈りをして、今夜の見せ場を頑張ることにした。ん? 見せ場? 聞かせ場? とにかく第一王子、おティンポをおっ勃てて、耳だけで、シコってください!
凌辱初夜(仮)の開幕じゃー。
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