2 物語のその後

1/1
744人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ

2 物語のその後

 その後ガリアード人気は高まり、初めに死んだモブの妻も後に激しく人気になったので、スピンオフとしてウェブ限定の十八禁アニメとなった。  俺もそれを見た一人。  当時、付き合っていた彼女がそのアニメにはまって、それで一緒に見させられた。  男同士の交じり合いもさることながら、ガリアードの肉体美とリリアンの美しい華奢な体に、男同士の恋愛もアリかなと思った。それくらいに完成度の高い映像美の凄さを感じた。  全国放送のアニメでは二人は美化されていたが、十八禁ウェブ限定アニメでのリリアンは疲弊していた。毎晩夫に罵られ、手ひどく抱かれる。楽しみは兄からくる秘密の手紙だけ。そんな中に大好きな兄が助けに来てくれたが、どう見ても劣勢だった。  このままでは、兄が殺されてしまう。そうなったらもっと自分には酷い凌辱が待っていると、そう思った時、自ら兄の刃の切っ先に触れることで、ガリアードの誤解を解くことにした。  閨で何度も誤解だと言っても、聞く耳も持たずにひたすら凌辱する夫を、リリアンは憎んでいた。  このまま死んだ方が楽になる。凌辱されきった体で公爵家に戻るのもはばかられたので、自ら死を選んだ。そして公爵家と辺境伯の誤解を解くために自分の命を捧げたのだった。  リリアンが死に際に見せた笑顔は、やっと夫の執着から解放される喜びの笑みだったのだが、周りは夫を思う妻のように見ていたのなら、それはそれで良かった。死ぬ自分が周りにどう思われようともう関係ない、はやく楽になりたかった。  その充足感に満ちた顔を、なにを勘違いしたのか夫は愛されていたと思った。  そんな感じの悲しい話だったぜ。  なんて可哀想なリリアン。  しかしながら凌辱大好き腐女子と腐男子の間では、ガリアード様は人気になった。リリアンはやられっぱなしの泣きっぱなし、ひたすら可哀想だったけれど、それが視聴者をたまらなく興奮させた。  俺ならリリアンの可愛い顔を持っていたら、ちょちょいのちょ―いって落とすのに! リリアン純粋過ぎだよ、拒絶ばかりじゃなくて、イイって言ってあげればもう少し優しい抱き方に導けそうじゃない? 俺から見たらガリアードは、簡単に攻略できそうな男だった。  愛されていたと知った……もとい思い込んだガリアードは、リリアンの死後、生涯妻は一人と誓いをたてるくらいには、男前だった。  凌辱しまくりだったけどな!  自分はというと、そのアニメを見た彼女が興奮して、なぜかアナルを開発するのが彼女の趣味となってしまい、三回に一度は挿入させてくれずに、彼女が自分の尻穴におもちゃを挿入するという卑猥なプレイを強いられた。  初めは抵抗するも、それが癖になってしまい、しまいには彼女にそんな男いらねぇと捨てられた始末。持て余す体をどうにもできず、もともと性志向は異性だったので、男とヤルなんて考えにもいたらず、SMにはまって散財した。  プロに頼んでおもちゃを挿入してもらうことでなんとか自分を保てたが、その時すでに女の子を抱けない体になっていた。  その原因であるガリアードがなぜ、俺の前にいるんだ。しかも顔を赤らめて! 俺氏のその後はどうなったかって?   それこそよくある話。24時間働いちゃう社畜は疲れきり、ボケッと歩いている時に階段から落ちて打ち所が悪かったのだろう。そこでここに来た記憶に繋がる。  コケてお陀仏という、リリアン並みに可哀想な最後なわけだ。  今はっきりと思い出したのは、この世界がアニメだということだけだった。そして自分の前には、大きな体をした美丈夫であるガリアード様がいる。  俺氏、オワタ。  死にました、転生しました、死ぬ運命です。てえぇぇ、神様酷くね? どんなムリゲーですか!?  なぜに出会いからのスタートなのだろうか。結婚回避とかそういうところから始まるのが、転生のテッパンのはずだ。そもそも十八禁アニメという選択が酷いと思った。  どうせなら俺TUEEEーとかじゃないの? え、もう古いって?   んなことあるかーい!
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!