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17 ヤリたい
朝食も済んで、初夜の続きする!? と期待するもそんなことはなく、普通に身支度が始まった。
えっ、初夜ってホントにその日で終わりなの? なんかこうさ、新婚期間は一週間くらいヤリっぱなし期間の特別休暇とか、そういう世界観じゃないの? 異世界ってだいたいそうでしょ? 俺はまだ覚えたての熱い体を持て余している。食事を食べるだけなのに、男らしくセクシーな男の中の男を見ていたらしたくもなる。えっ、ならない? えっ、凌辱しないと萌えないタイプ?
転生前は俺、結構好きだったのよ、えっちなこと。だから久しぶりに性癖を刺激されて、しかも念願の後ろ初体験もできて、それがまた最高に良かったから、またヤリたい。だって一回で失神しちゃうって凄くない? 今度はじっくり味わいたい!
昨夜は凌辱朗読からの初夜だったから、ガリアードの性癖が刺激されてできただけ? だから一回だけなの? や―だ―よ―、ヤリたい、ヤリたい、ヤリたいよぉ。
「リリアン様もヤリたいですよね?」
「ヤリたい!」
シーン。
今はガリアードと俺の着替えを、騎士のヤンとその妻リックが手伝っていた。リックは、昨夜の面白展開に自分だけ参加できないなんてズルいと言い、朝から初夜後の着替えのお手伝いに参加してくれたのだった。あのジェルの後遺症大丈夫なの? 後遺症よりも面白展開参加を選ぶって……。
さすがにガリアードとの愛の跡が残った俺の体を女性に見せるのは嫌だとガリアードが言ったので、ジュリではなくてそういうことに慣れているリックが呼ばれたわけだ。
仮にも仕える相手に慣れているって知られているリックって、どんだけオープンなのぉ!? 自らパンパン音を提供してくれるくらいだから、リックも好きなんだね、俺たち気が合うかもしれない。
そんなリックに誘導された、俺のヤリたい発言、場が静まった。
「リリアン」
「は、はい。申し訳ございません!」
さすがに可憐なリリアンが朝から初夜の続きをしたいなんて強請ったらいけなかった。
ヤッチマタァー。
大声でヤリたいなんて宣言してしまったぞ。ガリアードが真面目な顔でこちらを見る、怒られる?
「いや、そんなに乗り気になるとは思っていなかったから、驚いただけだ」
「驚かせてすいません、もう僕、出しゃばらないので捨てないでください」
ちょっと涙目になった。
ガッタイ前には処女認定をもらったけど、ビッチだと疑われるようなことを言ってしまった。これが凌辱に繋がって、捨てられて、暗殺されるのは第一王子ではなく俺になるとか、怖い未来が浮かんできてしまった。ガリアードと結ばれたからって、まだ気を緩めちゃだめだった。リリアンの死亡フラグは完璧に無くなったわけじゃない。
現状は凌辱されていないだけで、アニメ本編通りに進んでいるなら第二王子が第一王子を倒す、その大筋が変わらないなら死ぬのを免れるかは、まだ確実じゃない! 第一王子を倒すために誰かが犠牲になるストーリーのままなら、リリアンでしかないと思った。
「リリアン! なぜそんな話になる? どうした? 私が嫌になったのか?」
「ふへ?」
「泣きそうじゃないか、大丈夫だ。ヤルのは強制じゃない。リック、リリアンに変なことを聞くな」
「え?」
いったい何のこと?
「だって、第一王子って評判悪いじゃないですか! そんなやつを陥れられるなら、早くしたい! それにあんな下品なジェルを持ってきた医者も同様に、ぎゃふんと言わせてヤリたい! リリアン様もそう思いますよね? ヤリたいですよね!?」
「え? うん」
ヤリたい、ヤリたい、陥れたい、それを、ヤリたい……それだったのね。
「ほら、だからまたあの朗読会の再現をしましょうよぉ! リリアン様もヤリたいって言ったからいいじゃないですかぁ、俺も一緒に楽しみたかったぁー」
「朗読会?」
「そうですよ、今度はうちの旦那も一緒にリリアン様を凌辱して、僕も飛び入り参加の乱交パーティー風にしたら、第一王子も喜んでくれますって」
リリアン、ヤンにも凌辱されちゃうの!?
「あっ、もちろん声だけですよ?」
「えっ、あ、うん」
それにしても、朗読会をヤリたい……ヤリたいって言葉は難しいな。
脳内は今、確実にピンク一色だから難しすぎる。ヤリたいっていろんな使い方ができるらしい、社畜メモにいれておくわ。
それにしてもここの使用人たち、よくもまぁ次々いやらしいことを考えられるな。さすが十八禁バージョンの主人公がいる家だけある。そしてその家の家令だからこそ、あのシナリオを作れたのだろう。発想がなんというか、うん。
「そんな破廉恥なことを公爵家の人間がしたなんて、それこそリリアンやワインバーグ家のことを、第一王子が不審に思い、我が家共々、陥れられては迷惑がかかるだろう」
「でも、それを知るのは第一王子だけですよね?」
「だからと言って、リリアンにそんな卑猥な文章を読ませるなど……」
そうだね、さすがに乱交はちょっと……。どうしてノリノリでヤリたい発言をしてしまったのだろう。ガリアードとヤリたい、抱かれたい、そればかりが脳内を埋め尽くされる。俺のエロゲージが最上級に上がっていた朝だった。
「ガリアード様、僕はもう公爵家の人間ではありません」
「え?」
「お忘れですか? 僕はあなたの妻になりました。僕はもうオスニアンの人間です」
「ふふ、リリアンは真顔で嬉しいことを言ってくれるな。そうだ、もうリリアンは私の妻だ、辺境伯夫人だったな、リリアンの名前に傷がつくならそれは私に傷がつくのと同じ。運命共同体だ」
「へへ、僕の運命もガリアード様次第です」
俺は冴えている。
瞬時にこの場を理解して脳を切り替え、ガリアードを喜ばせる。これが俺の生き残る最善の方法。そうだよ、ガリアードさえ怒らなければ俺はきっと生き長らえる。このくだり、転生してから何回も俺の中で葛藤している。しつこいかもしれないけど、もう安心って思ったらやっぱりまだダメ、その繰り返し。
不安になるたびに、ガリアードをヨイショして俺を認めてもらう。ああ、早く安心して心から大丈夫って言いきれる状況が欲しい。
それにはやはり第一王子を排斥に導くしかない。だったら乱交パーティーだろうが、淫乱ナイトだろうが、どーんとコイヤぁ!
そこでコンコンっとドアをノックする音。
「入れ」
ガリアードの低くて男前の声で、「入れ」それだけで俺の後ろがキュンってきちゃう。入れ、はいれ、挿入ってきて欲しい、俺の後ろが朝からキュンキュンして仕方ない。
ああああー、どうした俺!? さっきから頭がおかしいぞ。
「ガリアード様、奥様、おはようございます」
「ああ、リチャード、朝から部屋にくるなんて珍しいな、どうした?」
渋いオジサマの家令こと、リチャードが入ってきた。
きっちりと服を着こなして乱れが一つもない、背の高い白髪と眼鏡の渋オジ。こんなオジサマがあの卑猥なシナリオを作った本人。この人は仕事ができる男って感じだから、実はガリアードの凌辱という本質まで見抜いていたんじゃないのか? 俺は恐ろしくなった。
「それが……第二王子がいらしております」
「なんだと!? 殿下が? はぁ、仕事が早いというかなんというか、こんな日に来なくても」
ええ!? 第二王子? それはガリアードの親友と言われている、この物語の主人公ですか! あっ十八禁アニメの主人公は俺とガリアードで、本編の主人公が第二王子。
でもさ、結婚初日の朝にくる?
ああ、俺の新婚生活はいきなり現実と向き合うこととなった。どうして第二王子が? っていうか王都離れていいの? 先ぶれもなく来ていいの?
どういうことぉぉぉー。
仕事が早いってなに、旦那様ぁ、この国の第二王子になんか仕事頼んだんですかぁ!?
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