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20 王子とリック
そこでお茶を追加で持ってきた執事とリックが入ってきた。
「おお、リック、相変わらず可愛いケツしてるな」
「殿下! 俺はもう人妻ですからお触り禁止ですってば」
なんだ、この光景は。リックのお尻をなでなでした殿下、そしてリックは王子相手に手を叩いた。それこそ不敬じゃないの? 偉い人のセクハラは、黙って受け流すのが基本のはず……。しかも王子は、一般社会でいう社長レベルよりも立場断然上。いうなれば総理大臣、いや、天皇陛下? リック凄い。
「ああ、リリアン。俺とリックはいい仲だったんだ。だからこんなのいつものことだ」
「ちょっ、誤解を招く言い方しないでください。確かに旦那に出会う前までは殿下とはそういう関係でしたが、もうその話はしないって約束でしょ!」
そういう関係って、どういう関係!?
「殿下、いい加減にしてください。純粋なリリアンが困っているだろう、チッ」
「こわっ、丁寧な言葉のくせにたまに入るその語尾っ怖いわぁ、そんな時はいつもリックが慰めてくれたのにな。あ――あ、まさかこの俺の可愛い子ちゃんが、ガリアードのとこの騎士に奪われてしまうなんて」
「何言ってんの。あんたの可愛い子ちゃんは俺だけじゃなかっただろ。もう、リリアン様も困っているからいつまでも昔話はやめてくださいね」
俺はガリアードの腕にしがみついた。するとガリアードが俺のおでこにキスをして優しく話をした。
「この二人は、以前関係があったんだ。殿下がしょっちゅう辺境伯領に出入りしていたのは、リックに会うためだったんだよ。そのうちにヤンがリックに惚れて、ヤンの勝ちだ」
「えっ、じゃあヤンも二人の関係を?」
「ああ知っている。なんせ知っていてヤンはリックを奪ったんだからな、うちの騎士は男前だろう?」
えっ、あのヤンが? この殿下からリックを奪った。すげぇ、ガリアードの周りは男の中の男だらけだった。王子の相手を奪うなんて、やりよる。そして殿下はしれっとした顔で俺に話した。
「ほら、俺一応職業王子だからさ、外でオイタできないの。ガリアードのところで何人か関係を持っていてね、でも今の彼女に出会って全ての関係は終わらせたんだ。リックにはその前にフラれちゃったけどな」
「そ、そうなんですか」
ヤン、よくやった。うん、こんな人のセフレの一人より、騎士のたった一人になった方が断然幸せだし、ヤンとリックは本当に仲がいい。
それにしても、知らなかった。王子の男関係奔放? アニメ本編でBL要素はほぼなくて、リリアンとガリアードが結婚していましたくらいの話をさらりとお伝えするくらいだった。時代に合わせて同性結婚を一つくらい入れておくのもいいとなって作っただけの夫夫関係を、アニメの世界も世の中に忖度した。そんな悲しい裏話だったリリアンの結婚秘話。
「それにしても殿下、暇ですか!? 新婚家庭に遊びに来るなんて最低なことしますよね」
「相変わらずリックの言葉は厳しいっ、でもそこが可愛いんだよな」
「はぁ、俺旦那以外に可愛いって言われるのむかつくんで、やめてください」
「つれない……」
リックはそんな事を言うのに、堂々と殿下の隣に腰を掛けた。誰も注意しないところを見ると、いつものことらしい。
「ねぇ、殿下! 俺おもしろいこと思いついたんです!」
「ん、相変わらず上目遣いエロいな。何考えたの?」
「あのね、ガリアード様がリリアン様を凌辱するの! そこに俺の旦那も加わってね、リリアン様をアンアン言わせるの、どう?」
「ごほっ、へ、な、なに言ってるの?」
殿下がごほごほとお茶をこぼした。そうだよ、何言っているんだよ、リック。それは朗読劇の話だろう? さも当たり前に俺を凌辱されるキャラにしないでよ、そしてオスニアン家を変態辺境伯とその仲間にしないであげてね。
「ガリアード、お前……俺の知らない間にそんな趣味を身につけたのか? 俺も参加させろ、じゃなかった。俺には愛おしい人がいる、おまえワインバーグ公爵に殺されるぞ、いくら何でもそんなお前を俺は擁護できないな」
「勘違いしないでください、リックの妄想です。リック妄想はその辺にしてお前は黙れ、あとは私が説明するから」
そうしてガリアードは、王家御用達と言われたジェルの話から、手鏡を使ってわざと凌辱シーンを再現した話を第二王子にした。
「すげぇな、オスニアン家。優秀じゃねえか、変態ぞろいでやばいわっ、笑えるっ! それにリリアンでかした! まさか”王国の花”がそんな演技に付き合うとは、兄上も想像さえつかないだろう、俺もびっくりだ」
「お恥ずかしいです……」
「それにリックの考える第二弾もイイ! さすが俺の一番の相性を誇っただけある。考えることが卑猥だわ。お前も飛び入り参加希望とか、どんだけこの家ヤバイんだよ、あっはは、笑い、止まんねぇ」
あ、言いましたね。相性一番! 王子がそんなことを言うなんて、それにリックも笑っている。みんなオープンだな。
「ねっ殿下、この案最高でしょ! どうせなら本番でもいいな、俺と旦那でやって、リリアン様がそれを見て恥ずかしがるっていういやがらせ? それなら鏡に映しても問題ないでしょ、俺のヤッてる姿ぐらい惜しみなく見せて差し上げますよ」
「なんだ、その美味しい映像は、俺も兄上の鑑賞会に交じりたいわぁ」
どんどんエスカレートしていきます。困った。
「それにしても王家御用達ジェルなんて聞いたことねぇぞ。そんなのあったらとっくに俺がお前に使ってただろ?」
「確かに! まぁウソだったんですけどね。医者がリリアン様を善がらせるために持ってきたやばい代物でしたよ。俺、イキ地獄初めて味わったもん。でも旦那が逞しいからずっと付き合ってくれて、最高でしたけどね」
「くそっ、もっと早くに俺が手に入れていたら、リックと楽しめたのにっ!」
おいおい、仮にも旦那のいる身の相手にナニをほざいている。
「そこらへんにしておけ、リリアンはまだ一度しか本番の契りを経験していないんだ。あまり耳だけ成長させてもよくないだろう、イキ地獄もいずれ味わうにしてもまだ早い。こういうことは旦那である私が丁寧に教えていくことで、誰かの交じり合いを見るのも、他の奴の裸を見るのも禁止だ」
イキジコク、俺いずれ味わうのですか? そしてまた言った。一回きりの契り。好きなの? そのワード好きなの? なんなの、俺一回でやめてやったぜ的なやつ? 俺紳士的なアピール?
「えっ、初夜一晩で一回だけですか? ガリアード様病気?」
「なっ、俺も思った。あのガリアードがそれで終わらすなんて、しかも人生一度きりの結婚初夜だぞ、これは本気の相手すぎるのか、はたまた離縁を望む相手なのか」
「あっそういうことか! それは間違いなく、リリアン様の初モノである体を気にしてのことでしょ。殿下は意地悪言わないの! 本気過ぎるほど本気ですからね、ガリアード様は“王国の花”を目の前にしても男の欲望を一度きりで抑えられるなんて、俺の主はかっこいい! ねっリリアン様」
もうやめてぇー。俺のシモの話はもうやめてェェー。
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