29 確認

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29 確認

   一通りの今後の流れを、再度兄とも確認をとり、兄は仲良く殿下の瞬間移動で帰っていった。そうか、第一王子は兄に告げ口という仕事をきちんとアニメ通りにこなしていた。ひとまず安心だ。 「ガリアード様、お父様が予想したとおりに、第一王子が動いてくれて良かったですね!」 「ああ、まさかリリアンの兄に話すだけではなく、映像を見せたのには驚きだったな、そこまであの兄の性格を第一王子は把握していたということか」  そうだよね、俺もそこ抜けていた。知っていたのに、抜けていたよ。リリ兄にちょっと悪いことしたな。身内のレイプ映像と音なんて聞いたらトラウマになっちゃうよね。演技だとは言っても、少しの間きっと絶望を味わっただろうな。  それにしてもリリアンは家族にめちゃくちゃ愛されている。  だからこそあのアニメの通りにしちゃいけない。リリアン死後にガリアードは愛に目覚めてリリアンを想う晩年を迎えた、それはまぁ自業自得だけど。でも家族としては辛いだろう、王命で無理やり嫁に出して、そして最後は死体で帰ってくるなんて。  ガリアードのその後は物語に出てきたけど、リリアン家族については触れてなかった。今は自分の家族になった以上、想像するだけで辛い。父も兄もリリアンの記憶として俺の中にあるし、俺が転生してからも実際に触れ合った、だからこそあの二人を悲しませたくない。 「あ、兄の性格って?」 「リリアンを溺愛しているということだよ、リリアンのためなら私に剣を向けるということだ」  ああ、そういえば。  たしかアニメでは私兵を借りるまでに猶予があったのに、これも俺が出てきたバグだろう。第二王子が俺という協力者を得たことから、動きが変わってしまった。鏡と繋がっている部屋を事前に突き止め、その部屋を部下に張らせていたとのことだった。思いのほか早く行動を起こした第一王子、それを探らせていたので動きがあるとともに兄を見つけて確保。そこでアニメとは時間がずれて、兄は第一王子の私兵と乗り込む前に第二王子に拉致されて辺境伯の屋敷まできた。通常ならどんなに急いでも馬で王都から三日はかかるはず。 「ガリアード様、兄が申し訳ありませんでした」 「いや、私もあの時、リリアンまで疑ってしまった。怖い言葉をかけてしまってすまなかった」  俺はガリアードの胸に顔を寄せた、そして甘えた声で言う。 「怖かったです。ガリアード様が本気で僕に怒っていて、とても怖かったし悲しかった」 「リリアン、すまない。あの時はどうかしていた、君が男に抱き着いていたのが許せなくて、兄だということも頭によぎらなかった」  そこで俺は上目遣いでガリアードを見上げた。 「僕は、家族とガリアード様以外の男性とは、触れ合ったことありませんよ?」 「そうか、そうだよな。リリアンはそういう子だ」  俺のおでこを撫でた、くすぐったい触り方に目を細めた。 「これからは僕を信じてくださいませんか? 僕はガリアード様を悲しませることはしません、だからっ」 「ああ、信じる。君を信じる、だからもう私以外に攫われるようなことにはならないでくれ」 「たとえ、父や兄でも、そうしません。僕の居場所はここだから。ガリアード様がいるところが僕の (つい)棲家(すみか)でしょ?」 「ああ、そうだ、愛しているよ、リリアン。私の最愛」  そっと瞳を閉じて、キスが下りてくるのを待った。優しい唇が触れる。よくもスラスラと女みたいなことが言えると思う、殿下にあざといと言われたのは間違いない。自分で作ってそういうセリフを吐くときもあるけれど、最近では無意識に言葉に出ている。もう心も立派にあざと男子になってしまった俺。  まあ、旦那が喜んでくれるならそれでもいいか。自然に出る方が自然体でいられるし。  そういえばリックとヤンの交わりはどうなったんだろう、特に兄はそのことについては何も言っていなかった。ということは、第一王子がただただAV鑑賞会を一人で楽しんだだけ? それは、なんというか、もうあの二人を止めよう、うん。  そんな事より、殿下がガリアードを可哀想扱いしたことが気になった。口淫をしてもらわないのかって驚いていた。そうだよね、男ならそれくらいしてほしいはず。俺は以前に断られてひるんだけど、今日はいいチャンスだと思ってもう一度おねだりして見ることにした。 「ん、ねぇ、今日はアレさせてくれませんか?」 「ん、ふっ、アレ?」 「んちゅっ、あん、そう、ガリアード様のコレ、僕も食べたい」  俺はキスをされながら、ガリアードの男根をさすった。 「うっ、だ、だめだ。それに触ってもだめだ」 「えっ、どうしてですか? ガリアード様は僕のを触るし食べるのに」  ほら、ちょっとさするだけでもう反応するのに、俺の可愛い口に入れたいだろう? このサイズが入るかは疑問だけど。 「リリアンの可愛くて気持ちのいい手に触られただけでも、もうこんなになってしまう。口なんてもってのほかだよ、君の小さい口にはとても入らないし、顔に淫らな液体をかけてしまいたくなる、そんなのは倫理的にダメだ! それにリリアンのお兄さんにも約束してしまったし、だから、ねっ、リリアンの可愛いお尻の中で気持ちよくさせて欲しい」 「ん――、ずるい。僕だってガリアード様を喜ばせたいのに、僕がしてもらって気持ちいいことをガリアード様にもしたいな? それにお兄様は関係ないじゃないですか!」  うーん、なんか理性って感じする。それを取っ払ってくれても少しだけならいいのに。 「うっ、じゃぁ、せめて全てが片付いたらにしよう。今のままでは君の兄君にも父上にも会わす顔が無くなってしまう。またあんな演技をする可能性もまだある、その時に私は身の潔白を証明できなくなってしまうから」 「難しいこと言いますね。でもあまり困らせても仕方ないし、今はいいです。でもガリアード様も我慢しないでくださいね? 僕ガリアード様が望むことなら頑張りたいです」 「可愛い人だ。頑張らなくても今のままで十分すぎるほど、私は満足しているよ」  キスで唇を塞がれた。これ以上会話はダメということだろう、なんだかガリアードの中でリリアンは汚してはいけない人になっている。気持ちいいけど、俺だって旦那を気持ちよくするテクニックが欲しい今日この頃なんだよ、いろいろ覚えてきた時って新しいことに挑戦したくなるじゃん、あんな感じ。  でも仕方ない、可愛いリリアンは流されてあげよう。 「リリアン? もしかして私との交わりに飽きてきた?」 「えっ、まさか! 毎晩楽しくて仕方ありません、いつも夜にガリアード様とこうやってくっつく時間が待ち遠しくて、ごめんなさい。はしたなくて」 「いや、嬉しいよ。私もリリアンと過ごすこの時間が楽しみで、仕事も頑張れるから」 「ん、良かったです」
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