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42 公開凌辱 ~第一王子視点~
やっとリリアンを手に入れる時がきた。
オスニアン辺境伯の手はついてしまったが仕方ない、あの幼く美しい男が汚されていく姿はたまらなかった。私の後妻にしたら毎日汚してやろう。私は辺境伯ほど鬼畜ではないから、欲しいものを沢山与えて甘やかして、辺境伯との違いを見せつけてやれば、すぐに私しか目に入らなくなるだろう。
夜会で久しぶりに会ったリリアンは、それはたいそう美しく成長していた。人の妻になり、性を知るとはそういうことなのか。あの辺境伯に開花させられたのは悔しいが、心は閉ざされたままなのを見て安心した。体だけ極上に仕上げてくれたのなら、むしろ感謝しかないな。
夜会の翌日にリリアンの父であるワインバーグ公爵に声をかけた。リリアンのことで秘密の話があると言い、例の部屋へと案内した。
そこで公爵に今までのリリアンの不遇を伝えた。
鏡の存在と、公爵の長男アンディにも見せた映像と音声を聴かせようとしたが、公爵に断られた。そんな大切な王家の秘宝を息子が持っているとは罪深い。今すぐそれを回収してくると言われたので、私は慌てた。秘宝はリリアンにあげたから問題ないと言ったが、それを誰が信じるかと言われた。自分は親なので殿下に貰っただけと言っても誰にも信じてもらえない、もう一人、爵位の高い貴族にも第一王子の意思でリリアンに贈ったということを伝えて欲しいと要望があった。
確かにリリアンが王家の品を持っているのは、宰相としてはまずい状況だろうし、いくら私があげたと言っても証拠がなければ、宰相が盗んで息子に辺境伯領まで持っていかせて隠しているととられてもおかしくない。
宰相の不安を払拭しなければ、たとえオスニアン辺境伯を 陥れても公爵家の支持は得られない。
ならば堅実で正義感に溢れていると有名な、バンドレフ侯爵も交えて、その鏡でリリアンが不遇に扱われている現場をリアルタイムで見ようと言った。そこでリリアンと約束した日を指定し、ワインバーグ公爵とバンドレフ侯爵をこの部屋へ呼ぶことにした。
約束の日、二人を鏡の部屋に招待し、オスニアン辺境伯夫妻の登場を待った。
初夜以来、リリアンの痴態を見られていない。私は久しぶりのリリアンの輝く生の体を見られることを期待していた。レースの下着を履く“王国の花”それだけでイケる。けれど重鎮二人を前に抜くわけにはいかないので、理性を総動員して、今までの経緯を改めて二人に伝えた。
「今言った通り、私がリリアンにただの手鏡として贈ったものだ。リリアンはこれが王家の秘宝ということも知らない」
「バンドレフ侯爵、恥ずかしながらリリアンは色恋ごとに疎くて手鏡の意味すら知らなかったのです。私は先日殿下からコトの経緯を聞いたので、リリアンを叱ることもできていないダメな親です」
公爵が侯爵に謝る。
「いえ、仕方ありません。あの“王国の花”ならばそういうたぐいのことを知らないのは当然かと。公爵が大層箱入りに育てられたのですから。ですが殿下も嫁に行く子に渡すものではないことを知っておりましたよね? それが男からの贈り物だと知られたら、リリアン様は辺境伯からどんな扱いを受けるか」
「もとからあの夫妻は深い関係になるような愛情は無いだろう。私が見た限り初夜でも酷い扱いだったからな、リリアンの手鏡など辺境伯は興味もないはずだ」
いや、あの手鏡は私から受け取ったとリリアンは初夜の日に辺境伯に言った。そしてそれを理由に辺境伯はリリアンを責め立てた。この間の夜会でも、辺境伯は私の元愛人のリリアンは、今では自分の妻だと私に言い張った。愛人と思ってもらえている方が、リリアンを深く傷つけてくれる材料になるから、騙せて良かった。
「初夜で酷い扱いというのはどういう意味ですか? なぜ殿下が他人の初夜をご存じで?」
「鏡で見たからだ」
「なんと……いや、そもそもなぜ夫妻の閨を覗き見など!?」
「リリアンが心配だったからだ。辺境伯がこの結婚を望んでいないという情報を得たから、もしリリアンが不当に扱われるなら助けなければと思って、手鏡を渡しておいた。現にリリアンが初夜で凌辱された証拠になった」
「な、なんと……」
そして侯爵は公爵を見た。
「ワインバーグ公爵はそれをご存じだったのか? ご子息が凌辱されていたことを……」
「私は映像を見たわけではなく、殿下から直接聞いただけなので知りませんでした。それにこの間王都に来た時に会った息子夫妻はとても仲良さそうにしていたので、そんなことになっていたとは知らず……」
ふっ、宰相ともあろうものが、たかだか辺境伯に騙されるとは。息子可愛さでそう思いたいだけだったのだろう。
「公爵は参加されていなかったが、夜会ではそれは冷え切った夫妻でしたよ」
「そんな! 私の前だけで仲睦まじい 夫夫を演じていたとでも言うのですか?」
「だから、初夜の映像を見ればいいものを」
そこであわてた侯爵が間に入った。
「ご子息の閨など親が見られるものではありませんよ、殿下。ワインバーグ公爵、一緒に確認しましょう。もし痴態を映された時は、そこで公爵には映像を見えないように配慮いたしましょう、殿下それでいいですな?」
「ああ、今夜二人の閨を見れば明らかになるだろう。それにリリアンのような可憐な人は離婚してもなんの痛手もない。私が後妻に迎えれば、今よりもいい待遇の生活が保障される。公爵安心したまえ、王家との縁も結べるしいいこと尽くしだ」
ワインバーグ公爵がぼそっと声を発した。
「……後妻?」
「ああ、だから安心して見守ろうじゃないか!」
リリアンには愛の告白をしたから、この結婚が終わればすんなりとリリアンを後妻に迎えられるだろう。それにしてもまだ部屋には誰も入ってこない。いったいいつまでこの頭の固い老人と、息子バカで真面目な公爵と待っていればいいのやら。
「しかしその花が手おられているとは驚きです。あなたの息子に良かれと思って、辺境伯との縁談を陛下に進言したのはこの私なので責任を感じます。公爵もさぞお辛いでしょう。必ずや辺境伯の 行ったことへの制裁は国でしっかりと責任を持ちましょう」
「ああ、そうだ! バンドレフ侯爵の言う通りだ。ワインバーグ公爵、そなたの無念は私が晴らしてやる。花を手おるなんてあってはいけない。公爵の大事な子息を! しっかりと王国の法にのっとり、犯した罪は 償ってもらおう」
公爵は私を見て笑った。
「ええ、犯した罪は必ずや、王国の法にのっとり償ってもらいます。たとえどんな身分の方であろうとも」
ふふ、公爵も辺境伯の断罪劇に乗り気だった。すると辺境伯に抱かれたリリアンが部屋に現れた。相変わらず美しい公爵令息、不安そうな顔をするも……笑った? まるで娼婦のような魅惑の笑顔で笑って一言。
『脱げ』
えっ!?
『いや、違う。跪け』
鏡の中では、リリアンの声が聞こえてきた。可愛い容姿からは想像もつかない、冷たい声。
実の父親である公爵は目を見開いて驚いている、そして侯爵も何事だ? という顔をして私を見る。
いったいどういうことだ? このセリフは辺境伯ではなく、私の可愛いリリアンが言っている。あの、屈強な男に可憐なリリアンが自信満々に命令している。
私たちの誰もが突っ込めないまま、辺境伯夫妻の痴態は続いていく。
リリアンは夫を蹴り、そしてまさかの三日分の精液を溜めて、目の前で夫に飲ませた。これは、これはすごい性癖じゃないか!? 夫が妻を凌辱するのではなく、まさかのリリアンが女王様としての地位を獲得していたとは!
リリアンは辺境を生きるために、身につけたんだ。鏡に映らない間に、リリアンは性の技を身につけ、クイーンに降臨していた。
そしてリリアンのミルクを飲み干した夫に満足をしたリリアンは、凌辱ごっこは終わりだと言った。二人は仲良くいつも通りのエッチをしようと言って、部屋を出ていった。これは夫夫の性癖だったらしい。
まさかの、作られた凌辱。そんな高度な性癖を持つもの同士のただの変態夫妻だった。
はっとしたら、公爵がわなわなと手を震わせていた。
「殿下、これはどういうことですか? リリアンが辺境伯に痛ぶられているんじゃなかったんですか? これは、まるで、うちの息子が夫を痛ぶっているようにしか見えません……。しかも、辺境伯も喜んでいた。あぁ、なんということだ! 私は、花のように育てた息子の性癖を知る日がくるとは!」
「公爵、いや、でも“王国の花”なのは変わりない。性癖は夫夫間でしか知りえないことです。問題ありませんよ。世間からはリリアン様は可愛い“王国の花”ですから! しかもお二人は喜んで楽しんでおられたし、仲が良くて良かったじゃないですか?」
侯爵は、息子の痴態を見てしまった公爵を憐れんで慰めていた。
いったいどうしてこうなった。
「もう息子が人の道に反していると、王家に知られてしまった!」
王家って、知ったのは私だけだ。それにこんな状況は想像すらしていなかった。私も唖然として言葉が出なかった。
「私は終わりだ、息子夫妻が変態プレイを楽しんでいるなんて知られたら、宰相としての威厳が」
「何も法を犯したわけではありませんよ。どこの夫婦にも人には言えないことはあります。それを家庭内で済ませるならなんの問題もありません。しかし人の閨を覗き見るのはいただけませんな」
侯爵は私を見た。
「こ、これはリリアンを守るためのものだ」
「いったいリリアン様を何から守るのですか? この結婚は陛下が決めたことです。むしろ守られた結婚です。それをいやらしい目で新婚夫妻の閨を見るなど、しかも、この鏡は王家の秘宝でしたね? それはすなわち陛下の持ち物。それを勝手にリリアン様に渡したのは何故ですか? しかもリリアン様を後妻にと言っておりましたが、辺境伯夫妻はとても愛し合っていたように見えます……。あぁここからは陛下にも聞いてもらいましょうか」
「な、なんだと」
その部屋は開けられると、父上の護衛騎士と騎士団の面々、そしてまさかの弟のサリファスまでいた。
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