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医者に聞いた内容は本当なのか?
そう思うくらいに男慣れもしてなさそうな可憐な令息がそこにはいた。ただひどく怯えている気がした。
私を恐れている?
とりあえず私が名乗ると、リリアンも名乗ったが、緊張していたのだろう、名乗るだけで噛んだ。とても可愛くて一瞬で花が開くような、そんな空気だった。私はニヤケそうになるのを抑えるのが必死だった。とにかく婚姻まではリラックスして過ごしてもらうため、顔合わせはすぐに済ませた。初めて会った夫になる人が自分よりも、かなり大きくて武骨な戦慣れしている厳つい男なら驚くのも無理はない。
そして例の医者の診察が始まる。私は自分の執務室で祈るように待っていた。
ノックの音と同時に執事が入って来た、その執事がいつも冷静なのに慌ててきたのでなにかあったのかと思うと驚いた。
「リリアン様が、ガリアード様をお呼びです」
「リリアンが? 今は診察中だろう?」
どういうことだ?
「その……処女確認の際に医者とはいえ、室内に男性と二人きりになるのは怖いのかと思われます。せめて確認の最中はガリアード様に手を握っていただきたいと、顔を赤らめて私にガリアード様を呼んできて欲しいと伝えられて……。あんな可憐な方が、夫になる人以外に大事な部分を見せるのは戸惑っているようで、そういう行為があることすら知らなかった無垢な方のようでした。少しお可哀想になってしまって、異例ですがここは側について差し上げたほうがよろしいかと……」
「リリアンが、手を? 私に手を握って欲しいと、そう言ったのか!?」
「ええ、それはもう必死に。あんな無垢な方初めて見ました」
驚いた。
医者の言っていることと、今起こっていることが全く違う。どういうことだ? それに出会った瞬間、やはり可愛いと思った。男の手垢などついているようにも思えなかった。そんな可愛いリリアンが、まだ結婚前だというのにすでに夫になる私を、私だけを頼っている? 執事も無垢と言った。やはりあの医者の思い違いじゃないだろうか?
医者から第一王子との関係の噂があると聞いたことを、あの時すぐにサリファスに相談した。第一王子がリリアンを想っているのは本当だろうけど、リリアン側のことは知らないと言われた。医者は第一王子の態度だけを見てそう感じて、私にあんなことを言ったのかもしれない。とにかく色々と確かめなければ!
「す、すぐに行く!」
返事をした瞬間、走って医者の診察が行われている部屋に行くと、怯えたリリアンがそこにはいた。可哀想に医者とは言え、旦那以外の男に股を開くことを知って、怖かったのだろう。
もう大丈夫だ、私が……うっ、なんだろう、まだ何も見ていないのに、興奮が止まらない。
「その、リリアンは、私に手、手を、に、握っていて欲しいと? そう聞いたんだが」
「は、はい。初夜を前に、旦那様以外に肌を見せてたくない……です。でも、診察で、僕の初めての場所はお医者様に触られるとのことなので、せめて手だけは繋いでいただきたくて……」
「は、ハジメテを!?」
ほらきた、やはりリリアンは無垢なのだ!
初めてと自ら言った。私以外に肌を見せたくないとも。もしやリリアンは望んでこの辺境の地に来た? 私の目を見て、恥じらいながら、しっかりと手だけでも繋いで欲しいと願望を言った。私が欲しいと、そう言った!
もうこの医者は信用ならないし、私の妻のつつましい場所を後にも先にも私以外の誰かが見るなど許せない。ましてや指を入れて処女確認など、私以外の指など許せる訳もない。人生で初めて独占欲が沸いた。今まで相手にしてきた女が処女だけだったわけではないし、人の手垢が付いているなど気にしたことがなかったが、リリアンだけはダメだ。誰かに汚されたなどあってはならない。汚すのは夫になる自分だけだ、自分だけが許された行為だ。
医者はぶつくさ言っていたが、診察セットをそのまま置いていったので、私は事前にリックから専用ジェルを使用してお尻に手を入れて拡張する必要があると言われたので、医者の荷物にあるジェルを出した。
王家から派遣されているということは、医者の持ち物全て王家が見分している。だから間違ったものはないだろうと思ったが、なぜだ? 男性器の梁型まで出てきた。私は急いでその医者のカバンを閉めて、リリアンには見せない様にした。そんなものを見たらリリアンは怖くて泣き出してしまうだろう。
リックからは梁型を使って拡張することもあるが、基本指と愛撫と嫌じゃなければ舌を入れてぬめりを良くしてあげてもいいと言っていた。それだけでも十分時間を要すれば解せるし、梁型はどちらかというと上級者のプレイに使用するだけだから、使う必要はない、そう言われた。
私のモノ以外、たとえおもちゃだろうともリリアンには挿れたくない。というか医者は私との前にこんな卑猥なものをリリアンに使おうとしていたのか? リリアンが私を呼んでくれて良かった、初めてが私以外の無機質なモノでなくて良かった。
リリアンは初めて見る、男同士に使用する潤滑剤を驚いた顔で見ていた。
控えめに自分が慣れ親しんでいるオイルがいいと言うので、結局医者の持ってきたジェルは使用しなかったが、今となってはその時の判断に救われた。あの医者は第一王子の指示でリリアンを楽しむためにきた卑猥な医師だった。あのジェルでリックはひどい目にあったが、リックという上級者だからこそ耐えられた品だった、もし処女のリリアンに使われていたらと思うと、ぞっとする。
そのジェルは最終的に、第一王子への断罪劇の際に、しっかりと張本人の元に戻り使用されたと言うから、それをサリファスに聞いた時はスカッとした。
とにかくそこから私とリリアンの夫夫生活は順調にスタートした。
初夜も最高なものとなり、そしてリリアンや私を陥れようとした第一王子は、ワインバーグ公爵、そして私をリリアンの相手として陛下に推してくれたバンドレフ侯爵、陛下、サリファスの協力の元、あっけなく退場となり、平民にまでされてしまい、しまいには変態医師の凌辱相手としてだけの妻になり、屈強な騎士もそれに加わり、今では毎晩男を受け入れるくらいに拡張されたらしい。
どこで知ったか知らないが、後孔に男根を二つ同時に受け入れるような危ないプレイもしているとサリファスは笑いながら言っていた。
恐ろしい男だ、自分の実の兄が雌犬になり果てた姿を見に、そういう卑猥な会場も用意してあげて宴を開いているらしいからな。第一王子は綺麗な男だから、その男を妻にできた医者はたいそう自慢らしく、外でも王子を抱いて人に見せているらしい。サリファスが用意した場所で、一番の見世物となり人気になっていたとのことだった。
変態のやることはわからないが、見世物にまでなるなんて。私とリリアン、そしてリックとヤンの閨を鑑賞して楽しんでいた男だ。自分のやったことが自分に返ってきただけのこと、私たちの神聖な交わりを見ようとした罰だ。勝手に堕ちてくれて嬉しい限りだ。
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