追っ手から逃げろ!

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追っ手から逃げろ!

皿屋敷の儀式が終了し、感無量のお菊さん。 武は千秋楽を終えたお菊さんに声を掛けた。 「お菊さん、良かったよ!」 「やっと、終わった。うぅぅぅ・・・」 お菊さんは感情が高まって泣き始めた。 武は猫と目配せしながら、お菊さんを待った。 しばらくすると、お菊さんは落ち着いたようだ。 武に向かって言った。 「じゃあ、帰ろうか」 武と猫とお菊さんは本物の『お菊の皿』9枚を持って、姫路城の城門を出た。 城門の前には信子が待っていた。 信子は武たちに近づいて「その車に乗って」と言った。 そこには黒塗りの車があった。 武たちが車に乗り込むと車は発進した。 自衛隊員らしき男性が車を運転している。 車内で武は信子に尋ねた。 「この車どうしたの?」 「ちょっとマズイことになってね。姫路から離れないといけなくなった」と信子は言った。 「どうして?」 「米沢派の残党が姫路駅にいた情報が入ったの。私の実家があるから奴らが来ても不思議じゃないわね・・・」 「それはそうだね。それで、今度はどこに行くの?」と武は信子に聞いた。 「東京!」 「東京? なんで?」 「人が多い所の方が見つかりにくいでしょ。『人を隠すなら人の中』って言うでしょ」 そういう諺(ことわざ)は無いが、武は意図を理解した。 「あ、そう。ムハンマドはそれでいいの?」武は猫に聞いた。 「俺は別にいいぞー。暇だしなー」と猫は呑気に答えた。 「お菊さんはどうする?」 今度はお菊さんに尋ねた。 お菊さんは考えている。 400年以上姫路に居たのだから、離れるのに抵抗があるかもしれない。 でも、お菊さんはこれから人間界で生きていかないといけない。 姫路に残ると身動きがとりにくいだろう。 お菊さんが迷っているのを察して、信子は言った。 「お菊さんの給与は研究所から払うから、お金の心配はしなくていいよ」 お菊さんは少し迷ったうえで答えた。 「私も行こうかな。東京に行ったことないし・・・」 車の外を見ると、陸上自衛隊の姫路駐屯地が見えてきた。 信子の話では、輸送機で東京の朝霞(あさか)駐屯地に向かうようだ。 武は姫路での2日間を振り返った。 播州皿屋敷伝説を解決できたし良かったー。 お菊さんは400年の皿屋敷伝説を振り返っているようだ。 目に涙を浮かべている。 ― チーン 明珍火箸の音色が聞こえたような気がした。 輸送機の音がうるさいから、気のせいか・・・ <終わり> 【後書き】 少年と猫が皿屋敷伝説に挑んだ姫路での2日間。 第1章がスタートしてから、5日目です。 長くなりそうです・・・ 少年と猫の冒険は、第3章『僕と猫とゲートキーパー』に続きます。
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