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☆
「あれラクト、陣内どした?」
振り向くと一弘さんがいたので、齧りかけのアイスを落としそうになった。しかも心から不思議そうな顔をしてる。信じられない。
「……アナタを探しに行ったんですけど」
「えっ、しょーがねーなーアイツ…ってウワ電池無くなってんじゃんか、さっき写真撮れたのに…ごめん、陣内に連絡して」
「もうかけてます」
おじさんはすぐ出た。
「おじさん、一弘さんいた」
ごめんなー、とボクの肩越しに謝る一弘さんに『心配させんな』と電話の向こうから返事が来る。ボクを挟んで会話すんな。
「ホントごめんなー、お詫びにラクトに美味いもん食わせとくから、お前も羽伸ばしてろよ。すいませんじゃがバターふたつ」
「えっちょっ」
『ラクト、そいつから目を離すな』
おじさんの深いため息が聞こえて、電話が切れた。
ボク、ラクト。千葉の中二男子。
…なんだけど、夏休みの間、北海道のおじさんのところに来ている。今日はお祭りなので、ボクは思いきってショートパンツの上に夏っぽい花柄のパレオスカートを巻いた。好きな服を着て、出店で美味しいものを食べれて、楽しい!
…の、はずだったのに。
この、じゃがバターをボクに渡して焼きそば買いに行った、一弘さんという人。おじさんの中学からの友達らしい。
少なくとも、そういうことになってる、らしい。
この前、福島で、見たことないおじさんを見た。大学からの友人という青瀬さんと、ゆるく話しててビックリした。
でも、北海道のこの人に、おじさんはまた違う態度を取った。
元気で、すごく馴れ馴れしくてボクのこともすぐ呼び捨てにしてくる一弘さんに、面倒そうに、ちょっと突き放してるみたいにする。
でも、見たことないキラッキラな目で見てるのだ。ずっと。ずーっと。ずーーーーーっと。
……なんなの?
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