夏祭はもう終わり(2015年8月)

3/7
前へ
/7ページ
次へ
☆☆☆  一弘さんに会ったのは、おじさんちに来た次の日だった。長旅でヨレヨレのおじさんを連れて食糧を買いに行く、その店で会った。  買い物のことは覚えてない。ずっと、キラッキラなおじさんが気になった。青瀬さんのことは、そういう目で見てなかったのに。  ママがおじさんにギャーギャー言う時『ホモのくせに』とよく言う。パパにそう言う言い方は良くない、と注意されても、ママは直してない。  確かにまだ独身だけど。ボクはそのくらいにしか思ってなかったけど。  アパートに帰ってから、聞いた。 「おじさん…あの、もしかしてだけど、一弘さんのこと、好き?」 「……なんで、そうなる」  おじさんは、隠し事バレた時のママみたいな顔をした。きょうだいってそんなトコ似るんだ。 「あっボクはママみたいに変だとか思ってないよ、ただその…そんな風に…見えた? ていうか…すごくそう見えた…」  おじさんは真っ赤になって頭を抱えた。 「まあ……大事は大事、だ」 「中学の頃からって言ってたよね、ずっとなの?」 「お前には関係ない。一弘にも言うなよ」 「えっでも」 「俺たちは腐れ縁の友達。それでいいんだ」 「それでいいの?」 「お前が口出すこっちゃないだろ!」  ビックリしたけど、おじさんはママと違って、怒鳴ったことをすぐ謝った。 「すまん…けど、お前は自分の気持ちを知るためにコッチに来てんだ。俺の気持ちより、自分のことに集中しろ」 「そうだけど…」 「言ったろ、自分の気持ちって奴は手強いって」  おじさんは、買ってきた肉を雑に冷凍庫に押し込んだ。 「今しっかり取り組まないと、俺みたいに延々戦い続けることになるぞ」  おじさんにずっと想われてる一弘さんは。  運転中ずっとうるさいくらい喋ってて、車からみんな下ろしたら「じゃオレチョコバナナ買ってきてやるよ」って秒で去って十分経っても帰ってこなかった。しかも、おじさんから千円借りて。  いくら何でも、好き放題しすぎじゃない?  ただでさえママに振り回されてるおじさん、可哀想すぎない?  ていうか、なんでこんなやつ嫌いにならないの? なんなの!  思い出した。 「一弘さん、チョコバナナは?」 「あ、そうだった。んじゃ買うか。これ返すな」  言いながらボクに千円札を返した。 「お金あるの?」 「あるよ。さっきから色々買ってるだろ」 「えっじゃなんで、おじさんからお金借りたの?」 「そうでもしないと、陣内がお前から離れないだろ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加