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☆☆☆
一弘さんに会ったのは、おじさんちに来た次の日だった。長旅でヨレヨレのおじさんを連れて食糧を買いに行く、その店で会った。
買い物のことは覚えてない。ずっと、キラッキラなおじさんが気になった。青瀬さんのことは、そういう目で見てなかったのに。
ママがおじさんにギャーギャー言う時『ホモのくせに』とよく言う。パパにそう言う言い方は良くない、と注意されても、ママは直してない。
確かにまだ独身だけど。ボクはそのくらいにしか思ってなかったけど。
アパートに帰ってから、聞いた。
「おじさん…あの、もしかしてだけど、一弘さんのこと、好き?」
「……なんで、そうなる」
おじさんは、隠し事バレた時のママみたいな顔をした。きょうだいってそんなトコ似るんだ。
「あっボクはママみたいに変だとか思ってないよ、ただその…そんな風に…見えた? ていうか…すごくそう見えた…」
おじさんは真っ赤になって頭を抱えた。
「まあ……大事は大事、だ」
「中学の頃からって言ってたよね、ずっとなの?」
「お前には関係ない。一弘にも言うなよ」
「えっでも」
「俺たちは腐れ縁の友達。それでいいんだ」
「それでいいの?」
「お前が口出すこっちゃないだろ!」
ビックリしたけど、おじさんはママと違って、怒鳴ったことをすぐ謝った。
「すまん…けど、お前は自分の気持ちを知るためにコッチに来てんだ。俺の気持ちより、自分のことに集中しろ」
「そうだけど…」
「言ったろ、自分の気持ちって奴は手強いって」
おじさんは、買ってきた肉を雑に冷凍庫に押し込んだ。
「今しっかり取り組まないと、俺みたいに延々戦い続けることになるぞ」
おじさんにずっと想われてる一弘さんは。
運転中ずっとうるさいくらい喋ってて、車からみんな下ろしたら「じゃオレチョコバナナ買ってきてやるよ」って秒で去って十分経っても帰ってこなかった。しかも、おじさんから千円借りて。
いくら何でも、好き放題しすぎじゃない?
ただでさえママに振り回されてるおじさん、可哀想すぎない?
ていうか、なんでこんなやつ嫌いにならないの?
なんなの!
思い出した。
「一弘さん、チョコバナナは?」
「あ、そうだった。んじゃ買うか。これ返すな」
言いながらボクに千円札を返した。
「お金あるの?」
「あるよ。さっきから色々買ってるだろ」
「えっじゃなんで、おじさんからお金借りたの?」
「そうでもしないと、陣内がお前から離れないだろ」
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