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ひなたは少し咳が残るものの、熱はすっかり落ち着いていた。ベッドをそっと抜け出し、リビングの明かりをつけた。雨風が窓を叩き、ベランダの鉢植えの葉がガサガサと揺れていた。まるで死霊が部屋の中に入りたくて騒いでいるようだ。
「なんつって」
怖い方へと妄想が広がってしまうのも、熱のせいだ。悪夢を見るほどの高熱など、久々だった。
「汗かいたな」
パジャマの替えを取り出そうにも、どこかに紛れ込んでしまったのか見当たらない。
「なんでこんなところに絵本?」
思わぬところで、無くしたと思っていたものが見つかった。だけど、パジャマは見つからなかった。仕方なく、買っただけで満足したキャラクターもののTシャツと水遊び用のハーフパンツを引っ張り出して着替えた。多少の違和感は仕方がない。さっさと解熱剤を飲んで寝てしまおうと、ミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出す。なぜか、冷蔵庫の中に目覚まし時計が入っていたが、気にせず閉めた。
「おっと」
熱でぼうっとしていたせいで、派手にこぼしてしまった。手近にあった台拭きはすでにびっしょりと濡れていて、床にこぼれた水を拭き取るのに一苦労だった。
「また汗かいた」
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