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「あ、千章おかえりー。なんか元気になったじゃん」
「うん、吐いたらかなりラクに……ん?」
答えている途中で、夕焼けだった窓の外が、突然ふっと暗くなった。なんだ? と首を傾げていると、
「おいおいおい! みんなすぐに逃げろーっ! 巨大隕石が落ちてくるぞっ!」
知らないおっさんの切羽詰まった大きな声が、店内に響き渡った。
「「「「……は?」」」」
泥酔しているせいで聞き間違えたんだろうか。けど、四人が一斉にマヌケ声を上げたから、多分聞こえた通りだ。
「なに? なんかのドッキリ?」
「だよね。だって急に隕石ってなに。しかも巨大って」
「アルマゲドンすね」
「ドウォナクローズマイア~イズ」
「語尾マネすんなよ、くどいわ」
なんて呑気に話している間に、照明が付いているはずの店内は真っ暗になった。どこからかゴーゴーと暴風のような大きな音も聞こえてくる。
「え、ガチのやつ?」
「え、ガチのアルマゲドンすか? ガチドンすか?」
「ドウォナクローズマイア~イズ」
「タックンそ……」
そのフレーズしか知らねえのかよ、というツッコミを瞬時に飲み込んだ。上から、めきめきめき、と妙な音がしたからだ。そしてやけに空気が熱い。
「うわ、天井燃えてるっす!」
「いや隕石、どんだけ豪速球なの!」
「隕石の落下速度は確か、時速10~20万キロくらいだぜ!」
「タックン! うんちく披露してる場合じゃねえから!」
真っ暗だった店内が、再び赤く染まる。天井の火はみるみるうちに壁やテーブルを燃やしていく。
「にににに逃げようよ!」
「どこにだよ!」
「とりまミラージュだろ!」
「今日鍵持ってないっすよ!」
店内はもうすっかり火の海だ。
「やばいっす、入口までの道が!」
「どうすんだよこれ!」
「うおー、あちぃ! マルコゲドン!」
「え、ムリムリムリムリ! ショウだけにショウシ、とかムリ!」
天井が、めりめりめりっ! と、ものすごい音を立てた。しかし、逃げ場がない!
「やべえ! 崩れるぞ!」
「ムリムリ! ムリだから!」
「誰か助けてー!」
「うわあああああああ!!!!」
俺の意識は、ぷつりと途絶えた──。
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