38人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
発見ごっこ
小学三年生のころ、町内にある小さな公園で、紗枝と由里香と三人で「発見ごっこ」という遊びをしていた。
公園にほど近い家に住む紗枝と由里香は幼馴染だった。クラスが違い学校では話す機会のない俺は、二人と遊ぶため田んぼ二枚分向こうの細道沿いの自宅からこの公園に通っていた。
発見ごっこは、公園内で見つけたものを交換し合うという単純な遊びだった。
発端は俺のおふざけだ。書店で「ユリイカ」という単語を見かけたことがきっかけだった。母親が食事の支度をしている隙に、スマホを勝手に借りて調べたところ、古代ギリシャ語で「発見する」という意味の感嘆詞だと知った。
由里香をからかう新しいネタができたと内心でガッツポーズをつくった。
「ユリーカ、ユリーカ! 由里香を本屋で見つけたぞ〜、由里香をユリーカ!」
「なにそれぇ。やめてよ、まーくん」
翌日の公園でテンション高くからかう俺に、由里香は困ったように笑い、紗枝にいたってはほとんど睨みつけてきた。
「雅史、最低〜」
あのころの俺は、気の強い紗枝ではなく穏やかな由里香のことが好きだった。
俺のことをまーくんだなんて恥ずかしい呼び方をするのは由里香だけで、呼ばれるたびにこそばゆさと特別感が混ざり合い、むずがゆい心の内を遠回しな悪戯でぶつけていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!