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陽葵とて元カノと言われれば確かに心は揺らぐが、今尚登のそばにいるのは自分だ。そしてその愛を一心に受けている自覚はある。もしかしたらジェニーは虎視眈々と尚登を狙っているのかもしれない、それでもジェニーに負けない自信はあった。
それでもため息が出たのは、全身の倦怠感だ。
「ああ、疲れた。使ってない筋肉使ったの、判る」
2時間近く体を動かした余韻は全身にある。右手で太腿を撫でていた、左手は尚登と指を絡ませ握り合っている。
「日常生活でも偏るけどな、今の陽葵じゃ余計だな」
言われて田辺との屈辱の日々を思い出し、唇を噛んでしまう。あの時も運動不足は痛感し初めころはささやかながら体は動かしていたが、後半はずっと布団にくるまっていた。
落ち込む陽葵の様子に気づき、尚登は空いた手で陽葵の頭を引き寄せ自身の肩に引き寄せていた、陽葵は素直に身を預ける。
「──もっと早く鍛えておけばよかったな。せめて山口行ってからだったらよかったのに」
マーシャルアーツを習うと話していた、にわか仕込みで実行できないまでも、反撃できると思えば心はもっと強くいられたかもしれない。
「そうだな。まあ、あんま強くなんなくていいわ。俺が助ける機会がなくなるから」
抱き寄せたまま髪にキスをすれば、向かいの席に座っていた女性は目撃してしまい、はあっと息を呑んだ。
「今回もまあ、田辺ぶん殴る機会は得られたのはよかった」
警察が陽葵を救出してしまっていたら、あるいは陽葵自身が逃げ出せてしまっていたら、できなかったことだ。どうせなら完膚なきまで叩き潰したかったが。
「尚登くんにはいつも助けられてるよ」
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