1. at GYM

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陽葵は思わず声をかけた、どう見てもジェニーには分が悪いのは歴然だ、身長差もあり男女差もあるのでは心配になる。本来そんなもの関係ない、女性隊員が武器を持ったテロリストの制圧だってできるように訓練していると尚登は言うが、ジェニーが尚登の腕を取り床に引き倒そうとしても尚登は簡単に覆してしまう、そして裏拳をジェニーの頬へ──もちろん寸止めにしているが焦ったジェニーの顔が忘れられない。素人の陽葵にも判る、ジェニーでは尚登の相手はできないのだ。 「だってよ、ジェニー。俺ももう少し骨のあるやつがいいわ」 そもそもジェニーが日本に来たのは、尚登のマーシャルアーツのコーチになるためだ。鈍った体を動かしたいと師匠であり施設長のセオドアに頼みその弟子を送り込んでもらったが、力の差は歴然だ、尚登の相手にはならない。 「セオには連絡しておく、次のやつを頼むってな。お前はさっさと荷物まとめて帰れ、って荷物はまとまってんか」 ジェニーが日本の地を踏んで1週間にも満たない、ホテル暮らしならば移動も楽だ。 「飛行機のチケットは買っといてやるわ」 言って臨戦態勢を解き、陽葵へと向き直った、ジェニーはその瞬間を見逃さなかった。数歩の距離を一気に詰め、右の拳で尚登の腹を狙う。だが尚登の動きは早かった、腹に到達する前にその手首を取り、軽く外側へ回す。 「Ouch……!」 軽くでも本来動かない方向への回転だ、痛みにつられ体は勝手に回されたほうへ傾き、膝をついてしまう。
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