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第2章
その手紙は昨年他界した父宛てだった。消印は福島県の三春というところだった。
「あなたにもう一度だけお会いしたくて、この手紙を書きました。26年前、あなたと出会ったあの日に滝桜の前でお待ちしています」
手紙にはそう書かれてあった。今から26年前に父はその三春を訪れていた。その時に撮ったものと思われる写真がアルバムに貼られてあった。そこには見事なまでの美しい桜の大木が写っていた。それが滝桜だろう。そしてその前で若く綺麗な女性と父が仲睦まじく並んでいた。それでその手紙の送り主はその女性だろうと思った。
父と写真の女性はどんな関係だったのだろうか。仮に2人が恋人同士だったとしても、父はその人とは一緒にはならずに母と結婚をしたのだ。それはどうしてだろうと思った。そこでその理由を知りたくて、更にはその女性と会えるかもしれないと思い、手紙が送られて来た三春へ行ってみようと思った。
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