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第1章
「狂おしや。狂おしや。狂おしや。狂おしや。狂おしや」
その姿はまるで獣だった。そしてその呪詛の言葉を何度も連呼すると、次は白い壁を爪で引掻きながら奇声を発し始めた。
私はその時、布団の中に潜って震えていた。そして布団の端を少しだけ持ち上げてその様子を見ていたのだ。ただ、これ以上覗いていて気づかれたらとんでもないことになると思った。そこで布団の端をゆっくりと降ろして行った時だった。それが私を見つけた。途端それは凄まじいスピードで近づいて来て布団を引き剥がすと私の髪を鷲掴みにした。そして私を白壁まで荒々しく引きずって行くと耳元でこう言ったのだ。
「いいかい。決して裏切るんじゃないよ」
それから私の顔を物凄い力で壁に押しつけると、先ほどと同じように奇声を発しながら白壁に爪を立て始めたのだ。
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