恋の終わり

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「本当に、短い間でしたけどお世話になりました。これからも頑張ります」 精一杯の笑顔を彼に向ける。 いつもなら、噂が広まった時点でその職場を静かに離れていた。だけどもう、私は逃げない。 「うん、浅木さんなら大丈夫。頑張ってね」 明日から、見慣れた風景に彼の姿は映らなくなる。だけど、今日という日までは確実に、八重樫さんが見ていた景色に、私は私のままで存在することができていたんだ。 それだけで、私は明日も立っていられる。  蝉の声は、もう耳に届かない。 気がつけば、日が落ちる時間も大分早くなっていた。 髪を切ったせいだろうか。首元が、やけに寒く感じた。 《完》
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