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「そうですか。あ、でも駅前に新しくできた居酒屋分かりますか?あそこのビールが美味いって噂で。この前部長に連れて行ってもらったんですけど、本当に飲みやすくて―――」
こちらの素っ気ない返事なんて気にもせず、伸びた前髪を邪魔そうに指で掻き分けながら話を続ける八重樫さんの姿を見ていたら、つい口元が緩んでしまった。
「え?俺なんか変なこと言いました?」
「いえ、ふふっ、すみません。あぁでもその居酒屋なら餃子も美味しいって噂ですよね、確か」
「まじっすか?わーこの前注文しそびれた。今度行ったら食べてみます」
そう言って、ふっと笑った時に寄った目尻の皺を見て、なんだか泣きたい気持ちになったことは、今でも覚えている。
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