極道の推し活、始めました【完】

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どのくらい時間が経過したのか分からないが、言われた通り一歩も動かずに静かな部屋の中で一人ぼんやりと畳を眺めていた。 バンッ…と、開かれた襖から顔を覗かせたのは推しの仁睦さんではなく─…私のことを睨みつける同い年くらいの男性。 後ろ手に襖をそっと閉めると…私のことを見下ろしながらジリジリと迫ってくる。っが…一歩も動かないと推しと約束をしてしまった手前逃げることも出来ず、大人しくその人の出方を待った 「……若頭は、ロリコンなの?こんなクソガキ匿って、何がしてぇんだろーな?」 私の目の前でしゃがみ込んだその人は、ニコッと微笑んで笑顔を見せてくれたので…それに安心して同じように笑って見せると、彼はスっと笑みを消し、冷たい視線を向けてきた直後… 私の左頬を思い切り殴った。 「あれ?泣いたりしないの?助けてって泣いて縋れば聞いてやろうと思ったのに」 なんの迷いもなく私の上に覆いかぶさってきたその人は、私が着ているワンピースに手をかけるとボタンが弾け飛ぶほどの力で乱暴に引き裂いた 「……へぇ、いい身体シてんね?」 ──…ガキに欲情する低俗な人間、発見。 手を伸ばしてくるのが見えて、この後自分がされるであろうことをなんとなく察した…どうせ逃げられないなら最後に、思い切り暴れて抵抗してやろうと思った。 伸ばされた手をギュッと握りしめる。 「……は?」 っと、一瞬相手が隙をみせた瞬間…グッと彼と距離を詰めて至近距離で目を見つめる。 何が起こった?っと瞬きをした彼の顔面に…思い切り頭突きを食らわせてやった。その反動で後ろに手をついてバランスを崩した男。 綺麗なその顔面に、ツーっと鼻血が伝って、、不謹慎ながらにそれがなんだかとても絵になっていて思わず見入ってしまった 「───殺す、」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。仁睦さんと同様に黒い塊を胸ポケットから取り出した男は、カチャっと音を立ててからソレを私に向けてくる 引き金を引かれたら…終わる。
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