極道の推し活、始めました【完】

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友人たちが王子を連れて食堂を移動していく中、紗弓は食べるのが遅い為…未だとんかつ定食を頬張っていたので私はその隣で大人しくスマホをつついて彼女が食べ終わるのを待つ。 「……で、最近どうよ?ちゃんと眠れてる?」 夏休みになると、眠れない日々が続くことがある。別に不眠症だとかそんな理由ではなく…ただ夏休みにいい思い出がないだけで、眠れなくなることがあるだけ。ただそれだけ。 長い付き合いになる紗弓は私のこの夏休み寝不足症候群を知っているのでこのように心配して声を掛けてくれる。 「仁睦さんに会ってからあのジャケットを抱きしめて寝てるんだけど、そうしてるといつの間にか寝ちゃうんだよね…いい匂いがするからかな?どこの香水なのか気になるから今度香水売り場でリサーチっ、」 「……やっぱり、返す気ないじゃん」 「いやいや、返すよ?!そこはしっかり、、」 私が眠れていることに安心したのか、紗弓はホッとしたような表情を浮かべて私の頭にポンっと手を乗せた。 「今日もおバカな英里が見られて、私は幸せだよ」 他の人が聞いても何のことだか分からないような、そんな何気ない友達の一言は…いつも私の胸をとてもポカポカと温めてくれる。 「…紗弓がくれたアロマキャンドルも、毎日つけてるよ。昨日もしっかり使わせて頂きました!安眠出来るんだよねぇ…アロマ」 「ちょっと…寝る前にちゃんと消してよ?英里の場合うっかり倒して火事とか起こしそうで心配だわ」 ほんと、心配性なんだから。そんなうっかりミスを私がするわけ─… ……あれ?そういえば昨日消した記憶ないな?
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