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「若菜さん!!部屋の鍵って持ってます?」
「え…?も、持ってるけど─…」
「貸してくださいっ!すぐに返すんで!!」
おそらく夜勤明けかなにかで昼間に帰宅してきたと思われる若菜さん。手には買い物袋が持たれたままなので…家に入る前に火事が起こったので巻き込まれずに済んだのだろう。
ただならぬ私の雰囲気に押されたのか、若菜さんが鍵を手渡してくれたので…それを手にして消火中の自室の隣である若菜さんの部屋へと走った。
「っ…キミ!危ないから、下がって、」
「燃えてるの、私の部屋なんです!命に代えてでも守りたい代物があるんです!どうか止めないでくださいっ!ここで死ねるなら本望っ、」
「っあ…コラっ!!!」
持ち前の逃げ足の速さを活かして、俊敏な動きで鍵を解錠し…何度か訪れたことがある若菜さんの部屋の中を爆走してベランダまで向かう。
私と若菜さんの部屋のベランダの間にある仕切りのようなものは以前二人で話し合って撤去してあったので…簡単に自室のベランダへとたどり着けた。
ベランダから見える見慣れた寝室。煙が少し入ってきているものの…炎に焼かれた形跡は今のところなかった。
洗濯物の物干し竿の下にあるブロックのようなコンクリの塊を持ち上げて、窓ガラスを破壊して鍵を開けてから、寝室へと侵入する。
そして真っ先に…仁睦さんからお預かりしていたあのジャケットを抱きしめて無事手元に返ってきたことに心から安堵する。
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