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「……屋敷の前で騒ぐな、迷惑だ」
低い…でも聞いていて不快ではない、バリトンボイスがすぐ耳元で聞こえた直後…聞いた事のない鈍い音が鼓膜を揺らした
何が起こっているのか理解できない私は、ただただ身体を震わせる事しか出来ずにジッと大人しくこの後の自分の末路を悟った。
あぁ…きっと酷いことをされて捨てられるんだ
っと思った直後…目隠しをされていた手が解かれて視界がクリアになった。まず最初に映ったのは、地面で倒れている先程の変質者。気絶しているのか、白目を向いて天を仰いでいる
──し、死んでる?!
ワナワナと再び身体が震え始めた時、背後からグッと腕を引かれて身体を反転させられる
「……は?クソガキじゃねぇか」
………これでも一応大学三年生だぞ?ピチピチの二十歳ですけど、何か?!
っと一言だけ言わせてもらおうかと顔を上げた時、そんな感情は全て吹っ飛んでしまった。なぜなら私を見下ろしている男の顔面がとんでもなく…好みだったから。
その人は大きくため息をついてから、軽く私のことを睨みつける。
「この屋敷はお前みたいなガキが足を踏み入れていい場所じゃない。間違っても二度と近くを彷徨くんじゃねぇぞ。」
……この屋敷?
ふとすぐ隣の高く積み上げられたブロック塀を見上げる。今のアパートに越してきた時から、凄いお金持ちが住んでるんだろうな、と思っていたその御屋敷。
和風の平屋で、松の木なんかが生い茂っている古風な御屋敷の周りは…外からは中を拝めないようにしっかりと高い壁のような塀で囲まれている。
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