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その空き地までやってきた。
私達は二人でベスを探した。
けれど、ベスはここにもいなかった。
「ベスは、いつもこの空き地にいた。誰かの捨て犬だったのかもしれない。人懐っこくて、近所の人たちからもかわいがられていたんだ」
「ベスに会うために、毎朝散歩していたの?」
「ベスに会うのは、散歩の楽しみの一つだったよ。ベスは子犬を産んでいた。子犬も、とってもかわいかった。見せたかったけど、散歩、嫌いだったよな」
「で、その子犬はどこにいるの?」
「……車にはねられて、みんな死んでしまった」
ベスは、死んだ子犬にずっと寄り添っていたらしい。
保健所の職員が来て子犬の遺体を片付けているときも、ベスはそばでじっとしていたとのこと。
片付けが終わっても、ベスはその場でじっとしていたらしい。
すっかり意気消沈して、動けなくなっていたのであろう。
そして、ベスは野良犬として捕獲されそうになっていたとのこと。
その顛末を見ていた夫は、ベスを引き取ることにしたらしい。
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