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「おはよう。」
目覚めると、金髪の超絶イケメンが目の前にいた。
「へ?」
「まあ、話はあとだ。まずはこれを食え」
そういって布団の横にある小鍋を指さす。
「粥だ。食べる元気くらいはあるだろう?」
「は、はい!」
今すぐ食べないと下げられてしまいそうだったので急いでかきこむ。粥ってこんなにおいしかったっけ?
「うめえ」
思わず口にすると、彼はそっぽを向いてそうか、と呟いた。
言外に、早く食べろと言っているのだろうか。
「おかわりもあるが」
「…へ?食っていいの?俺殺されるんじゃねえの?」
「そんな状態じゃ商品にすらならない」
そういうことかよ。
「じゃ、後十杯」
鍋を差し出すと、待ってろ、といって本当に鍋を十杯分持ってきた。
こんな食べたのいつぶりだろ。
「おい、どうした?」
え?言われて初めて気が付いた。俺は泣いていた。
「だってっ。こんなに飯食えたの久々で、俺もう死ぬんだって思ってっ。」
グスグス泣きながら粥を食った。最後までうまかった。最後の晩餐として申し分ないな、と思った。
「じゃ、ついてこい」
とうとう出荷か。まあ、そうだよな。
また黒塗りの車に乗った。
俺の人生、最後はイケメンに眺められながら粥を食べたのでごちそうさまです。俺はもう死ぬ覚悟はできています。そう、車の中で祈った。
そう、死ぬ覚悟でいたのだ…。
が。
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