20人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
普通だった
中学生に上がるころまでは本当に普通、だった。
でも、中学生一年生のある日、僕はどうしても観たい映画があった。その日はちょうど、両親が出張でいない日だったから、遊びに行っても怒られない日だった。
そして、映画を観るまではよかったのだ。一人で誰に邪魔されることなく鑑賞し、感想を言い合う義務もなく、頭の中で映画をリプレイしながら帰っていた。
しかし、それが良くなかった。いつも両親と歩いていたから道がうろ覚えだったことと、夕方でいつもと見え方が異なっていたせいで迷子になり、いつもは行かないような路地裏にいつのまにか来てしまっていたのだ。
そして、そこにはいかにも怖そうなお兄さんたちに囲まれている女性がいた。
僕はそのまま見てないふりをしようとしたのだが、運悪く一人に見つかってしまった。
「何見てんだこのガキ?」
「あ?」
「見られたからにはこのままただで返すわけにはいかねえなあ」
まあ、実をいうとそこからの記憶はないんだけど。アクション映画鑑賞後ということもあって、というか危険を察知した本能が作動しただけだと思うんだけど、そこで全員を倒しちゃったんだよね…。気が付いた時には全員伸びててさ…。でもいつの間にか仲間に連絡してたみたいで黒塗りの車が三台、僕を取り囲むように止まったんだ。逃げ場がなくて、ああ、終わったと思った。
「お前が全員やったのか?」
車から出てきたおじいちゃんは何とも言えない威圧的なオーラを放っていて、こくこくと頷くことしか僕はできなかった。
「そうか。では来い」
最初のコメントを投稿しよう!