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* * *
全身を心地良い気怠さが包み込んでいる。
「ん……」
ラファエルが目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
部屋の照明は落とされており、夜も明けていないらしく辺りは真っ暗だ。
幾度か瞬きを重ねると、次第に目が慣れてくる。視線の先にあったのは、見慣れた天井――すぐに自分の部屋だと分かった。
ラファエルはシーツの上に広がっていた長い髪を掻き上げながら、ゆっくりと上体を起こした。
「……おや?」
ベッドを下りて、窓際に向かう。そこでふと違和感を覚え、自分の姿を見下ろした。
ラファエルはいつも、就寝時には真っ白いガウンを着用している。なのに今、身に着けているものはなにもない。
「……ええと」
ラファエルはカーテンに手をかける。できるだけ朝日で目覚めたいため、いつも少しだけ開けているのだ。それが今夜は何故かきっちりと閉まっている。
それもまた不可解で、ラファエルは改めて記憶を辿った。
昨夜は確か、突然ギルベルトがやってきて……それも珍しく一緒に飲もうだなんて、酒を持ち込んできて。
正直、そんなことはそうあることではなかったので、それならまぁ、1、2杯だけ……と、並んでソファに座り、グラスを持って――。
「……途中から記憶がありませんね」
ふむ、とラファエルは顎に手を添え、首を捻る。
何度思い返してみても、2杯目を注いでもらった辺りでぷつりと途切れてしまう。
カーテンを開けると、射し込んできた月明かりが壁際にかけられていたガウンを照らし出した。ラファエルは手慣れた所作でそれを羽織ると、再度頬に手を当て首を傾げた。
「う゛……」
その背後から、不意に何か音がした。
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