酒は飲んでも……

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「この声は……」  一瞬、動物のうなり声のようにも聞こえたものの、 「――ギル?」  やはり聞き覚えがある気がして、ラファエルはくるりと振り返った。  仄かにとはいえ、室内が明るさを得たこともあるのだろう。広めのベッドの奥側に影があり、それが人一人分の大きさであることもすぐに分かった。  ラファエルは足を進め、頭からすっぽりと覆っていた上掛けをそっとめくってみた。 「……寝てる」  悪夢にうなされているような表情に、断続的なうめき声。  けれども、彼――ギルベルトはいまだ夢の中にいるらしく、まるで意識はないようだった。 「わぁ……なんですかこれ。すごいですね……」  ギルベルトもまた全裸だった。  全裸なのはまだいい。問題は――目についたのは、その褐色の肌にすらはっきりと浮いて見える夥しい数の鬱血の痕だ。  それを誰が付けたのかは……状況証拠からして恐らく自分だ。  だけど自分にその覚えは一切ないため、何だか悔しいような気にもなってくる。 (……これ、本当に僕が?)  それでも認めなければならないのだろうか。  上掛けを更に除けてみると、(予想はしていたが)下半身も酷いありさまだった。  谷間(たにあい)から溢れた白濁が、やはり多数の痕が刻まれた太ももに幾重もの筋を(えが)いている。 「も、やめ……」  ギルベルトがいっそう眉根を寄せる。と同時に、うわごとのように漏れた声はかなり掠れていた。 「…………」  ラファエルは無言で上掛けを戻し、ベッドを下りた。
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