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「嘘だろ、お前……ほんとに何も覚えてねぇの?」
あんなにしつこくしておいて?
こんなに痕を残しておいて?
……あんなに何度も中に注いでおいて?
マジもうこっちは足も腰も全然立たねぇっつーの!
何かもうどこもかしこも布にこすれるだけで微妙に痛ぇし!
つーかマジ乳首とか取れるかと思ったし!!
それ全部? 全部一切覚えてねぇの?
俺さまをこんな状態にしておいて……?!
あまりの衝撃に、ギルベルトの口がただはくはくと戦慄く。
「それと……あなたに勧めていただいたお酒。とても美味しかったので、良かったらこれからまた飲み直しましょう。まだ残ってますよね?」
そんな胸中など知るよしもなく、ラファエルはギルベルトの肩を撫でていた手をするりと背筋に滑らせながら、宥めるように微笑んだ。
「いや……もういい」
「え?」
「もういいって言ってんだろ……」
「どうしてですか? まだ夜は長いですよ?」
「もうお前とは二度と飲まない」
シーツに顔を伏せ、絞り出すように言うと、ラファエルの指先が今度は首筋に触れた。項を隠すように伸びていた髪をかき分け、擽るように爪先が表面をひっかいていく。
「も、触……っ」
はね除けたいのに、身体はいまだに動かない。
そうしているうちに、ぞくぞくとした浮遊感が広がって、思わず首を竦めて目を閉じる。
「じゃあ……今からあなたを抱いていいですか?」
「……は?」
ギルベルトは耳を疑った。
「だって僕……何も覚えていないので。もったいないじゃないですか」
「な、に言って……」
「だいたい、本当に僕なんですか? あなたをこんなふうにしたの……」
は――――――?!
「そういうわけなので……」
「いや……ちょ、ちょっと待っ――」
あくまでも笑顔で身体をひっくり返してくるラファエルに、ギルベルトの全身から一気に血の気が引いていく。
「ほら、あなたが自分から来てくれるなんてめったにないことですし……」
「そ、れは……っ」
あの酒にどういう効果があったかなんて、今更言えない。そもそも、ギルベルトは自分がハーフであることを失念していた。そしてそのことにまだ気づいてもいなかった。
「――では、いただきます」
「いや、まてまてまて……!!」
では、じゃねーんだよ!
何がいただきますだ――――!!
心の中で叫びながらも、ギルベルトは認めざるを得なかった。
――作戦は、大失敗だったと。
(いや、つーかマジこいつ俺を殺す気か!!)
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