49人が本棚に入れています
本棚に追加
「クソ……なんだよ優先順位って！」
バーカウンターの天板を力任せに叩き、ギルベルトは不機嫌に任せて声を荒げる。
今夜は本当なら可愛い猫耳の小柄な女の子が隣にいるはずだったのだ。なのにぎりぎりになって紙飛行機が届いた。『優先順位的に今日はだめになっちゃった！ ごめんねギル、また今度！』
「今度なんざねぇよ！ てめぇとはもう終わりだちんちくりんが！」
この俺様を差し置いて、何が優先順位だ！
再度天板を叩くと、傍らにおいてあったグラスから雫が散った。
「まぁまぁ、ギルくん。それでも予約した店に来てくれる律儀さが僕は嬉しいよ」
「……別に、どうせ暇んなったし」
「……へぇ？」
「なんだよ」
「当り前だって言うかと思った。崇め奉れって」
「そ……れは、そうだな……？ 俺様のおかげで食いっぱぐれなくて良かったな、マスター！」
慣れた様子でテーブルを拭きながら、マスターと呼ばれた長身の男がくすりと微笑む。ギルベルトが喚こうが怒らないのは、今は他に客がいないからであり、
「そんなこと言って、どうせまたツケで飲む気でしょう」
と同時に、そこでカランとベルを鳴らして入ってきた、別の客のことが頭を過ぎったからでもあった。
「げ！」
金色の長髪に白い法衣姿の男がギルベルトの方へと近づいてくる。ラファエルだ。気がついたギルベルトはあからさまに嫌そうな声を上げた。
「代金払ってるの誰だと思ってるんです」
最初のコメントを投稿しよう！